帝人が「介護休職730日」を導入した理由 女性活躍推進からダイバーシティ推進へ

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そこで2000年に専任組織の女性活躍推進室を設置した。このとき「外の風を入れよう」ということで、室長を外部から公募した。これがよかったと思う。公募の結果、初代の室長となったのが、田井久惠である。田井は大卒後にいったん日本企業に就職したが、退職して米国留学し、帰国後に外資系に就職した人だ。そして勤務しながら1992~94年、神戸大学の社会人大学院で人事・労務を学ぶというキャリアを持っていた。

女性のキモを座らせる「女性幹部育成プログラム」

――田井室長の下でどのような施策に取り組まれましたか?

まずは、経営層の女性比率を上げること、すなわち、管理職比率を上げることである。女性活躍においてひとつの障害になるのは、女性自身の気持ち、覚悟だろう。そこで2003年から、女性幹部育成プログラム「WIND(Women’s Intensive Development)」を実施した。

これは3つの研修から構成されている。最初はダイバーシティ概論、多様なリーダーシップ、自らのキャリアプランについて学ぶ研修だ。各事業部からの推薦を受けた15~16人の女性社員が対象だが、研修には彼女たちだけではなく、女性社員の育成責任者の部長も出席する。

この研修の目的はふたつ。ひとつは、帝人が経営戦略としてダイバーシティに取り組む意味を理解し、受講生がダイバーシティを体現する主体であることを自覚してもらうこと。

もうひとつは、一人ひとりが異なるようにリーダーシップのパターンもさまざまで、どんなタイプの人間、もちろん女性であっても、リーダーになれることを理解してもらうことだ。

次の段階では、観察学習をベースにした研修を行う。他企業の部長以上の女性に依頼してロールモデルになってもらう。その女性を研修受講者3人が訪問して、話を聞き、引き出して、その話を基にキャリアストーリーを文章にまとめる。

そして帰社後にそれぞれの聞いた経験を共有し、「幹部になるために私たちに必要なものは何か」をディスカッションする。この観察学習を通じ、それぞれがキャリアビジョンを持つことを期待する研修だ。

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