任天堂と資生堂の決算を分析する アベノミクスの波に乗れなかった、残念企業たち

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「特別損失」のうち、大きなウエイトを占めているのが、2010年(平成22年)3月に買収した米国の化粧品会社ベアエッセンシャル社に関する無形固定資産の減損損失286億円です。つまりは「のれん」の価値の減少だと思われます。買収したものの、思ったほどの利益が出なかったために減損せざるをえなくなった、ということだと考えられます。

資生堂は4月から前田新造会長(右)が社長を兼務(左は退任した末川久幸前社長、撮影:今 祥雄)

それから、「構造改革費用」が57億円計上されています。鎌倉工場を閉鎖したり、研究開発を行っていた2つの研究所をひとつに統合するなどの再編を行ったために生じたものです。

以上のことから、資生堂は前期、減収減益となりましたが、本業自体はまずまずの調子ですから、今期は回復するのではないかと思います。特別損失も363億円出してしまいましたが、この額で立ち直るのであれば、任天堂よりは傷口が小さいでしょう。

資生堂のセグメント情報を見てみると、海外売上高が44.9%となっており、意外と海外比率が高いことがわかります。しかし、グローバル事業では32億円の営業損失を出しました。前期は82億円の営業利益を出していたことを考えると、大幅な減益です(資生堂のセグメント情報、決算短信の2ページを参照)。

資生堂の業績が落ち込んだ原因は、昨年9月に起こった中国での反日運動の影響と、米国の子会社の減損損失です。この2つが足を引っ張ったのです。

しかし、これらは一時的な要因ですから、今期(2014年3月期)の見通しは、影響がなかった前々期(12年3月期)と同じ水準まで回復する見込みとなっています。

会社の安全性を示す「自己資本比率」を計算すると、42.5%と十分に安全水域に入っていますね。「流動比率」も178%ありますから、財務的には非常にいい会社だと言えます。

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