任天堂と資生堂の決算を分析する アベノミクスの波に乗れなかった、残念企業たち

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その理由は、「営業外収益」の「為替差益」です。前々期はゼロでしたが、今期は395億円も計上されていますね。「為替差益」とは、為替レートの変動によって生じる利益のことです前々事業年度末の為替レートは、1ドル=82.19円。前期の事業年度末は1ドル=94.05円ですから、対ドルで12円近くも円安が進んだわけです。これによって、海外にある資産などの円換算額が上がったと見ることができます。

以上のことから、「当期純利益又は当期純損失」は、前々期は432億円の損失を計上していたのに対し、前期は70億円の利益を出すことができました。ただし、繰り返しますが、本業での稼ぎは依然、低迷している状況です。

収益は悪化しているものの、安定性は抜群!

以前は、トランプや花札などを作る京都の老舗工場だった任天堂。しかし、その後「スーパーマリオブラザーズ」と「ファミリーコンピュータ」が大ヒットし、日本有数の超優良企業へと成長していきました。

当時から現在に至るまでの爆発的な売り上げは、「貸借対照表」からも読み取れます。「純資産の部」のうち、利益の蓄積である「利益剰余金」が1兆4140億円。これは驚異的な数字です。過去、いかに儲けたかがわかります(同社の貸借対照表、決算短信の6~7ページを参照)。

また、会社の中長期的な安全性を示す「自己資本比率(=純資産÷資産)」を計算しますと、84.8%という数字になります。この指標は、一般的に固定資産を多く要する企業では20%以上が望ましいとされていますから、任天堂の中長期的な安全性は抜群と言えます。

さらに驚くべきなのは、短期的な安全性を示す「流動比率(=流動資産÷流動負債)」です。この指標は、一般的には120%程度あれば短期的に安全であると言われていますが、任天堂は566%という並外れた数字となっています。

流動資産の内訳を見ても、「現金及び預金」と「有価証券」だけで約9000億円に上ります。また、「負債の部」に関して言えば、項目すらほとんどない状況です。無借金であることは言うまでもありません。

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