民進党の「年金カット法案批判」は見当違いだ 将来世代の給付底上げへ、冷静に議論すべき

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今の年金制度では、現高齢者の取り分を減らせば将来世代の取り分は増える(写真:xiangtao/PIXTA)

民進党の「悪癖」が再び顔をもたげている。今臨時国会で審議中の年金制度改革法案について、同党の玉木雄一郎幹事長代理や山井和則国会対策委員長らが「年金カット法案」と強硬な批判を展開している。しかし、その内容は制度に対する誤解を含め、まるで見当違いの主張だ。有権者を混乱させるという意味では、かつて民主党政権が「嘘つきマニフェスト(選挙公約)」と呼ばれた時代に逆戻りしつつある。

民進党が批判するのは、同法案中の年金額改定ルール変更の部分。名目賃金上昇率がマイナスで、物価上昇率よりも低い場合には、新規裁定や年金受給済みの既裁定の年金額を賃金変動に合わせて改定するというものだ。確かにこのようなケースに該当した年には、現行の改定額より年金受給額が減るのは事実で、民進党が「年金カット法案」と呼ぶゆえんだ。

年金改定法案は将来世代の受給額を増やすもの

だがそうした批判は、木を見て森を見ない議論にほかならない。なぜなら、この改定ルールの変更で将来世代(現役世代)の年金受給額は逆に「増える」からだ。なぜそうなるのか、年金制度をひもときながら見ていこう。

2004年の制度改革以降、日本の年金制度は大きく姿を変えた。年金保険料率の上限を決めて負担増を封印、その範囲内で見込まれる今後約100年間の収入と一致するよう、年金給付額を自動調整していく制度に変わったのだ。

このとき、給付を自動的に削減していく機能を「マクロ経済スライド」というが、これによる現高齢世代での削減がスムーズに進めば進むほど、将来世代の給付は高くなる(目減りが削減される)。100年間の収入総額は一定で、これを現高齢世代と将来世代の間で分け合っている構造だからだ。

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