JR九州の「初値3100円」は、高いのか安いのか 本業の鉄道は厳しいが不動産事業には強み

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ところで、鉄道事業に不安をかかえるJR九州だが、意外な強みもある。

鉄道以外の事業で安定的に高収益をあげていることだ。駅ビル不動産事業は、前期に204億円の営業利益を稼ぐ。さらに大型商業施設の運営、ホテル、建設など、幅広い多角化事業で、利益を稼ぐ。

不動産事業には「隠し球」も

駅ビル不動産事業には、ここからさらなる事業拡大の期待がかかる。鉄道事業で前期5256億円もの減損損失を出したことにより、不動産事業にはさまざまな「隠し球」が用意されたと推測できる。

JR九州は、前期の鉄道資産の巨額減損について、以下の通り注釈をつけている。

「鉄道事業資産については、事業運営上、路線の維持が必要であることから、回収可能価額は正味売却価額によらず使用価値により測定している」。つまり、赤字路線も含め、鉄道資産は、鉄道資産のまま使い続けることを前提として、減損額を決めたということだ。

JR九州は、これから鉄道事業のコストカットや、運営の見直しにさらに踏み込むことになるだろう。その見直しによって、現在保有する22路線をすべて維持したとしても、鉄道資産として、維持する必要がない資産も出てくると考えられる。それを駅ビル不動産事業に転用すれば、高収益資産に変わる可能性がある。

これは、先に上場したJR東日本などが過去にやってきたことでもある。旧国鉄が分割民営化してJR東日本が設立されたとき、鉄道事業の運営維持に必要な最低限の資産以外は、国鉄清算事業団に移管することが原則とされていた。

にもかかわらず、JR東日本は、今年3月末時点で賃貸不動産に1兆0207億円の含み資産を有する巨大な不動産会社になっている。設立後、鉄道事業で使用しなくなった資産を不動産事業に転用することによって、不動産業の利益を拡大していった。駅上空の空間が使えるようになる規制緩和も追い風となったからだ。

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