開業2年目「北陸新幹線」、沿線駅の明と闇 駅前と市街地が競合する地域も

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長野駅の隣駅・飯山駅がある飯山市では、足立正則市長に直接、駅周辺整備の経緯をうかがうことができた。新幹線駅の建設に際し、在来線の飯山駅を移設することとなり、街の中心部を丸ごと造り替える必要が生じた。2万人余りの市民から100人以上が検討組織に参加し、時には深夜1~2時まで及ぶ会合を100回以上重ねて、およそ10年がかりで新たな空間づくりを検討したという。

飯山駅に飾られていた駅周辺の模型

飯山市を囲む北信濃の山河や文化を、新幹線という高規格鉄道とどう融合させていくか――。人口規模を考えれば驚くほどの労力を費やした結果、2015年12月の記事で紹介した駅舎が誕生した。

JR東日本は飯山線に観光列車「おいこっと」を投入するなど利用促進に努めたが、飯山駅の2015年度の乗車人員は1日平均504人と、開業直後1カ月の平均とほぼ同水準だった。市は1日の利用目標を1300人に設定しており、その4割にとどまった形だが、市は「1300人という数字は、北陸新幹線が大阪まで全線開業した場合の試算値」と説明する。また、JRグループが外国人観光客などに限定して販売している乗り放題切符「ジャパン・レール・パス」の利用者が相当あり、実勢値は200~300人多いはず、と推測している。

飯山市が独自に2016年1月中旬~2月下旬の週末限定で利用者数をカウントしたところ、周辺地域が冬季の観光資源に比較的恵まれているためか、平均1630人の乗車があったという。東北・北海道新幹線の沿線が、冬季の観光客確保に悩む姿とは対照的に、雪のない「グリーン・シーズン」の利用促進が課題となっている。

最近、足立市長から届いた知らせによると、飯山市は1974年に大阪市と「スポーツ交流姉妹都市宣言」を交わしていたが、北陸新幹線開業を契機として、今年9月25日には「姉妹都市交流」を新たに宣言したという。

開発計画が相次ぐ上越妙高駅前

飯山駅から一駅、県境を越えた新潟県上越市の上越妙高駅では、コンテナ商店街「フルサット」が同駅西口で駅前活用の先陣を切り、民間の駐車場も3カ所で開設された。

秋になって、「駅の西口でいくつか開発プランが進んでいる」と地元から知らせが届いた。確認してみると、地権者組織・上越市新幹線駅周辺地区商業地域土地利用促進協議会が主体となり、日帰りの温浴施設と商業テナントビルの建設構想を進めていることを、地元紙・上越タイムスが10月6日の紙面で報じていた。また、建設業界紙の記事によると、大手ビジネスホテルチェーンが2017年春の進出を計画しているという。ほかにも、水面下で進むプランがあるという。

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