納得!「天気のことわざ」が意外と当たるワケ 「飛行機雲が広がると雨」には根拠がある

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そこで、晴れた昼間の空は青い光がもっともよく見えるようになり、青空となるのです。一方、日の出や日の入りの時刻は、太陽の高度が低く、太陽光線は大気の中を長く通るため、波長の短い青色は散乱されすぎて弱くなり、波長の長い赤い光が残って空は赤く見えます。これが朝焼け・夕焼けのしくみです。

しかし、朝焼けや夕焼けはよく見るとオレンジ色だったり、紫がかっていたりとさまざまです。これは、大気中のちりや水蒸気の量、雲の高さや量によって光の散乱のされ方が変わってくるからです。

美しい「空の帯」の正体

もし、夕焼けのあとに空が不気味なほど赤く見えたり、東の空まで赤く見えたりする場合は、翌日は晴れるどころか雨のサインです。特に夏場には、夕焼け空に違う色の帯が西から東へのびていることがあります。これは「天割れ」または「薄明光線」といい、沖縄の八重山地方では、台風が接近するサインとして恐れられてきたそうです。

紅色、オレンジ色、紫がかった色など、夕焼けといってもその色はさまざま(写真:イチゴミナト/PIXTA)

実は、空の帯は西のほうにできている積乱雲の影なので、積乱雲の塊である台風が今後近づいてきてもおかしくはありません。朝焼けに関しても、空が真っ赤に燃え上がるような朝焼けは天気が崩れるサインですが、東の空だけが黄色っぽいものは、晴れのサインです。

昔は、今よりも自然と密接に暮らしていました。天気によって、食べ物がどれだけ採れるのかが変わってきますし、悪天候で命を落とすことも今よりずっと多かったことでしょう。今のようなコンピュータによる予報がなくても、周囲の様子を丹念に観察してなるべく的中率の高い天気予報を行わなければ死活問題です。

だからこそ、たくさんの観天望気の中から、当たるものだけが残り、長年その地方で言い伝えられてきたのではないでしょうか。今でも農林水産業に長年従事している方は、当たる言い伝えをたくさんご存知です。もし、地方に出かけ、アウトドアスポーツなどを楽しむ際は、そういった言い伝えにぜひ耳を傾けてみてください。

今井 明子 気象予報士・サイエンスライター

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いまい あきこ / Akiko Imai

2001年京都大学農学部卒。酒メーカー商品企画部、印刷会社営業職、編集プロダクションを経て、2012年からフリーに。子ども向けや一般向けにわかりやすく科学を解説する書籍や記事を多数執筆。著書に『気象の図鑑』(共著、技術評論社)、『異常気象と温暖化がわかる』(技術評論社)がある。ほか、医療・健康、教育、旅行分野も得意。気象予報士として、お天気教室や防災講座の講師も務める。

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