東京チカラめし、ついに普通の牛丼に参入 焼き牛丼の旗手が進める「Nプロジェクト」

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もともと居酒屋を事業の中心としていた三光マーケティングフーズは、2009年に低価格居酒屋に参入。自社店舗を次々と1品270円均一の低価格業態「金の蔵Jr.」に変え、業界を席巻した。低価格居酒屋ブームが終焉し、居酒屋業態の同業他社が軒並み業績を低迷させる中でも、同社の営業利益率は10%前後に達するなど好調を維持していた。

ところが2012年後半から様相が一変し、居酒屋事業が低迷する。既存店売上高は前年比85%程度に低迷。書き入れ時の昨年12月も売り上げが振るわず、足元での大幅な減益につながった。

居酒屋業態の変調を受けて、同社は女子会メニューの拡充やイタリア食材フェアなど付加価値の高いキャンペーンを実施したものの、思ったような効果は上がっていない。水面下で低価格から中価格帯への業態転換など抜本的な居酒屋テコ入れ策を模索しているが、効果は未知数だ。

“煮る牛丼”の成否にチカラめしの成長懸かる

こうした中で三光マーケティングフーズは来2014年6月期(13年7月~14年6月)もチカラめしを中心に50店程度の出店を行う見通し。ただ、食材費が高止まっていることに加え、居酒屋の既存店売上高の減少に歯止めがかかりそうにないことから、業績の急回復は難しい状況とみられる。

三光マーケティングフーズの平林実社長は、チカラめし業態で牛丼業界に参入した当初、「数年以内に1000店舗体制を築く」と意気込んでいた。しかし、出店スピードが減速するに従って、チカラめしの店舗数の中期目標が示されることはなくなった。

牛丼に詳しいある業界関係者は「大手も出店縮小している。牛丼はオーバーストア状態だ」と指摘する。チカラめしが再び成長を加速させられるかどうかは、煮る牛丼の成否に懸かっている。
 

松浦 大 東洋経済 記者

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まつうら ひろし / Hiroshi Matsuura

明治大学、同大学院を経て、2009年に入社。記者としてはいろいろ担当して、今はソフトウェアやサイバーセキュリティなどを担当(多分)。編集は『業界地図』がメイン。妻と娘、息子、オウムと暮らす。2020年に育休を約8カ月取った。

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