相次ぐ値上げ、食品メーカーの勝算 価格をめぐる攻防は本格化

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広がる容量減による値上げ

値上げ浸透には、急激な円安という理解されやすい要因が大きい。加えて油脂は原材料のほとんどが輸入物の大豆や菜種だ。いずれも昨年急騰した穀物で、ストレートにコスト増に直結した。原材料の約7割が油脂であるマヨネーズも同様の傾向にある。原材料価格の影響が大きい商品やメーカーの寡占程度が高い商品については、小売業者も値上げを受け入れる環境が整いつつある。

一方、「今後、値上げをすべて受け入れることはできない。どこまでのむかは、交渉次第」(食品スーパー)との声もある。

メーカー側もあの手この手で対策を打っている。価格は据え置き、内容量を減らすことで、原材料コストの上昇分の一部を吸収しようとする実質値上げの動きも出始めている。

輸入豚肉などの原料高騰を受け、日本ハムは7月からソーセージなどで価格は変えずに容量を5~11%減らす。主力商品のソーセージ「シャウエッセン」は本数を維持したまま1本の内容量を約2グラム減らす。

はごろもフーズも5月、主力のツナ缶「シーチキン」2品の容量を約10グラム減らす実質値上げを行った。主力2品は特売の多い商品であり、容量を減らしても値頃感を維持する。

今後の焦点は、まだ値上げを表明していない菓子や即席麺メーカーの動向だ。値上げを視野に入れるメーカーも多いが、原材料が多岐にわたり、メーカー間の競争も激しく、油脂のように値上げが理解を得られるか未知数だ。容量を減らすにしても、カップ麺のように1食分の量がある程度決まっている商品や、内容量に敏感な固定ファンがいる菓子では、対応が難しい。

ある菓子メーカーは「新商品を中心に、原材料の種類や配合の見直しを検討していく」という。値上げ、実質値上げとも難しい状況では、商品改廃時に安価な原材料に切り替えるなど、品質を犠牲にするケースも出てきそうだ。

「メジャーな商品になればなるほど、消費者は内容量をわかっており、容量減は“実質値上げ”と言われる」(大手スーパー)。小売り側の納得を得るのは簡単ではない。

14年春には消費増税も控える中、価格をめぐるメーカーと小売りの攻防は激しさを増しそうだ。

(週刊東洋経済2013年6月8日号)

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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