グローバル時代だからこそユニークなポジションを−−ハーバード大学教授 マイケル・ポーター

グローバル時代だからこそユニークなポジションを−−ハーバード大学教授 マイケル・ポーター

優れた競争戦略を表彰する「ポーター賞」(http://www.porterprize.org/ 運営:一橋大学大学院国際企業戦略研究科)が今年で8回目を迎える。マイケル・ポーター教授(ハーバード大)は、競争戦略の第一人者で、賞の運営に密接にかかわってきた。

日本企業は、全社的な品質管理や改善(カイゼン)運動によって、コストと品質における優位を保ってきた。しかし、グローバル競争の進展により、この競争モデルには限界があることが明らかになりつつある。品質による競争にとどまるのではなく、戦略とイノベーションによる競争でどう差別化をするのか。日本企業にとって、戦略の重要性が一層高まっている。

ポーター賞はこれまで16社、7事業部が受賞してきた。いずれもユニークで優れた戦略を実践し、業界平均以上の収益を上げてきた企業、事業部である。2007年の受賞会社となったデニム製造のカイハラ、医薬品製造のマルホ、製造小売りの良品計画の3社に対する講評とともに、グローバル時代の戦略について、ポーター教授に聞いた。

--07年の受賞会社は、カイハラ、マルホ、良品計画の3社でした。この3社をどう評価されましたか。

受賞会社はいずれもユニークな戦略を持ち、革新的です。過去の受賞会社と比較をすれば、「日本的な要素(ジャパニーズネス)」を持っていることでしょうか。独自の文化やデザインがあり、日本での商品に対する需要を反映させている。それを顧客にうまく提示しています。

カイハラはデニムの会社で、着物で伝承されてきた織物技術を生かしている。マルホはスキンケアに特別の要求とニーズを持つ日本市場で独自の路線を見つけた。良品計画は禅的ともいえるシンプルさの中にもデザイン性があって、顧客の支持を得ている。いずれもハーバード・ビジネススクールでケーススタディになりえます。

--グローバル競争の中で、結果として日本的なものを追求した企業が受賞した。

そうです。グローバル経済だからすぐさま市場がグローバルになるというわけでもなく、企業がユニークであるためにはローカルな需要を見極める必要があり、それが極めて重要なのです。グローバル経済では、規模が大きいことがよいことだと思いがちだがそうではない。受賞企業は、日本のローカルな需要を満たして成長した。日本にいることで日本のマーケットに対応したのです。

ユニークな存在になるためには、一つだけユニークなものがあればよいのではなく、いくつものユニークさを積み重ねることが必要です。ビジネスの講義では、「大規模にやらねばならない」「コスト・イズ・キング(安いことが最善だ)」ということになっている。安く作るためには中国やインドや他の地域に進出すべきだと。しかし、受賞した3社は逆方向に行くことで成功しています。

--教授は、日本企業についてその戦略性のなさを従来から指摘されています。カイハラやマルホからわかることは、中堅であっても明確な戦略を持つ企業があることです。日本の中堅企業も、こうした企業が増えてきたと見るべきでしょうか。

世界を見渡すと、ドイツでも米国でもそうですが、どの国でも大企業が活躍しているように思いがちです。しかし実際は大企業だけではなく中堅企業でうまくやっている企業がたくさんあります。起業家精神を持ち、競争優位の戦略を持っている。

大手、中堅を問わず多くの日本企業が戦略やイノベーションについて考え始めるようになりました。経営者の理解が進み、利益こそがカギであり、利益を出すためには他者と違うことをせねばならない、他人のまねをすればよいというものではないと認識し始めています。シャープのような大企業でも液晶のディスプレーに注力している。

--グローバリゼーションはますます加速しそうです。日本企業が事業戦略の設定に当たって注意すべきことは?

グローバリゼーションはこれからも続きます。ただし市場がグローバルであればあるほど、戦略はフォーカスされたものでなければなりません。日本には巨大な市場がありますが、成功するためには市場すべての要求を満たそうとするのではなく、自社のユニークな戦略を定義することです。

もう一つ言っておきたいのは、グローバリゼーションは、いまだに地域によって多くの差異があるということです。言い換えれば、私は世界が本当にフラット化しているとは思わない。私は日本がまだまだ欧米や中国とは異なると考えている。つまり、多くのニーズが互いに似ているように見えても、現実には多くの違いがあるものなのです。

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