「6月、日本株大暴騰」の根拠 「5・23ショック」のあとに、待ち受けるもの

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日本株の「新しい現実」に対応した機関投資家

話を元に戻す。―――わが国における証券マーケットで活躍する機関投資家たちは、基本的にシステム・トレーディングによる取引を行ってきている。個人投資家は「手動」でパソコンをクリックし、取引をするのに対して、機関投資家はコンピューター上、あらかじめプログラミングされたソフトウェアに沿って「自動」で売買を繰り返す。その際、最も重要になって来るのが複雑な数理分析に基づいてはじき出された統計データだ。このデータを見ると、今後、日本株マーケットがどうなるのかがたちどころにわかるのだが、これをシェアしているのは機関投資家だけである。それを持たない個人投資家は、いわば素手で戦いに挑んでいることになる。

実は、5月9日の段階で、国内機関投資家たちが大慌てで「ある作業」を済ませていた。彼らが用いていたプログラムは、基本的に今年2月半ばの段階での日本株マーケットにおける上昇率を前提としたものであった。ところがその後、日本株は余りにも上昇し続けてしまい、この時のプログラムでは対応不可能というレヴェルにまで達してしまっていたのである。そのため国内機関投資家たちは「新しい現実」に対応したプログラムと統計データに慌てて入れ替えたのである。その結果、「日本株ロング(買い)+米国債ロング(買い)」というポジションが形成され、一気に日本株は上昇し、1ドル=100円台へと突入したというわけなのである。

そして新聞・メディアが語らない「マーケットの真実」をもう一つだけ記しておくと、この時すでに信じられない“未来”が統計分析では弾き出されていたのである。

統計分析で弾き出された、日経平均3万6000円説

「このまま行くと2015年3月までに平均株価は36000円台に突入する」。

国内機関投資家たちはこの驚愕の分析結果を手元に置きながら、その後、盛んに買い進んでいたというわけである。しかもこのデータ分析はあくまでも、私の言葉で言うならば「日本バブル」第1弾についてだけの話である。「他に投資先がない状況」となったらば、事態は一気に加速し始めるはず。そう、「日経平均=3万6000円」などというレヴェルでは済まなくなる可能性すらあるのだ。「平成バブル(1989年、3万8915円)」を越える驚愕の株高・・・。

ロンドン・シティから冒頭で紹介したメッセージが届けられたのは、ちょうどその頃のことだった。日本株マーケットでは高騰に次ぐ高騰が続く一方、データ分析は「一体誰が買っているのか」という一点に絞られて引き続き行われていた。やがて「割安だから買う」のではなく、あくまでも「中長期的な視点からの買い」を目指しているという意味で安定的なトレーディングを好む国内機関投資家たちの影が、うっすらと見え始めることになるのだが、他方で一部の銘柄では明らかに不可思議な値動きも始まっていた。

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