太平洋セメント、過去最高益への道筋 震災復興工事が本格化、東北で需要活発

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縮小

被災地では、工事を請け負うゼネコンが人手不足や資材調達難で悲鳴を上げており、実際に計画どおりに復興工事が進むか、心配する声がある。それでも、自公政権に移行して半年が経過し、復興庁の体制強化や予算措置は前の民主党政権当時に比べると充実してきた。

よって、猛暑や冬の厳しさという季節要因から前月比2ケタの伸びが続くことはあり得ないとしても、国内販売の1割を背負う東北地区が牽引して、会社側の控えめな国内販売の見込みは年間を通じて上回ることはほぼ確実だろう。

思い起こせば、太平洋セメントは5年前の08年3月末に、売上高1兆円のグローバル拡大路線を鮮明にした中期経営計画を発表。その当時は、11年3月期に1兆0230億円、営業利益790億円、純利益270億円を目指す拡大戦略を打ち出した。

ところが、当時のセメント業界は、公共事業削減と、不況による設備投資圧縮で、1996年度に8241万トンだった国内需要が、半分程度にまで減少。同社は、販売数量が毎期減少するなかで、中計計画を撤回し、縮小均衡路線に180度転換した。秩父など3工場の生産中止や、希望退職募集などリストラを実施。電子材料や建材といった多角化事業も見直して国内の採算性を大きく改善させる荒療治を行った。

来年度はさらに業績伸長へ

来年度(15年3月期)は復興需要と海外収益の増加によって、さらに拡大する見通しだ。11年以降、東京や大阪のターミナル周辺のビル建設ラッシュや、マンション開発、被災地の復旧工事など、生コンクリートの需要が集中的に増加。こうした恩恵で、リストラ効果が倍化して、業績は回復歩調に入った。

赤字が続く北米や中国、ベトナムなど海外事業も収益貢献が果たせるように強化を図っている。こういった積極策の相乗効果が首尾良く発現すれば、今なお続くグループ関連企業の再編などリストラによる特別損失の発生をこなしながら、過去最高の純利益だった07年3月期244億円の更新が射程に入ってくるだろう。

古庄 英一 東洋経済 記者

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ふるしょう えいいち / Eiichi Furusho

2000年以降、株式マーケット関連の雑誌編集に携わり、『会社四季報』の英語版『JAPAN COMPANY HANDBOOK』、『株式ウイークリー』の各編集長などを歴任。

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