みずほ証券 行政処分の影響度

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みずほ証券 行政処分の影響度

みずほ証券が10月に業務改善命令を受けた。これから金融審議会で本格的に議論が始まる銀行と証券の「ファイアウォール規制」はどうなるのだろうか。(『週刊東洋経済』11月10日号より)

サブプライムローン問題に起因する証券化市場の混乱を受け、270億円の中間赤字に沈んだ10月26日。みずほ証券は金融庁から業務改善命令を受けた。同社は親会社であるみずほコーポレート銀行(みずほCB)から非公開の顧客情報を受け取り、それを基に有価証券(既発の利付金融債)の買い付けの勧誘などを行っていた。

金融庁や証券取引等監視委員会によると、みずほ証券エクイティグループ業務開発部長(当時)は2006年6月、親会社であるみずほCBから顧客の同意を得ないまま72顧客分の非公開情報を受け取った。また、同証券市場営業グループでは、市場営業第4部の職員が06年1月、みずほCBから顧客の同意を得ないまま71顧客分の非公開情報を受け取り、それを基に、上司である市場営業第4部長が新規顧客を勧誘するよう部下に指示、少なくとも3件の有価証券の勧誘を行った。

銀行が証券業務を兼ねると、預金者と投資者間で利益相反が起きたり、銀行による優越的地位濫用の危険性があるとして、金融商品取引法などは銀行と証券子会社との間で非公開情報をやり取りしたり、役職員が兼職することなどを禁止している。

ここに言う非公開情報とは、一般の人が手に入れることが不可能な情報という意味ではなく、「親法人等の役職員が職務上知り得た顧客のその他の特別の情報」を指す。具体的には、みずほCBが過去に販売した利付金融債の保有残高などだ。顧客リストは学校法人など非営利法人のものだった。親銀行の職員でなければ知ることの難しい、職務上知り得た情報と認定された。

右の表にあるように、過去に同様の事例が7例あるが、いずれも非公開情報の入手にとどまる。勧誘行為が処分の対象になったケースは初めて。06年1月の新生証券の場合、市場営業部付部長(当時)らは、親銀行である新生銀行在籍時の顧客リスト約400件を持ち出している。リストには借入残高なども含まれていた。

みずほ証券の場合、近く営業部門に異動になるかもしれないと思った当該部長が、異動後に備えてみずほCBに出向いて資料を入手(06年6月の事例)。また、06年1月の事例の場合、みずほ証券側がみずほCBから顧客情報を受け取ったのは、みずほCBの営業担当者が退職し、みずほCBから顧客のフォローをお願いされたからだという。金融庁などが立証できた3件のうち1件の顧客は、金融債を数千万円分購入した。

みずほ証券には今年4月現在で1936人の役職員が在籍しているが、このうちみずほCB出身者は「5%未満」(同証券)。みずほCBとの人事交流も、転出入合計で年間30人程度(06年度)と少ない。部室長以上の幹部に限ると、約180人のうち25人がみずほCBからの転籍異動組だが、「役員や執行役員が指示しているわけでもない。組織で意思決定したというより、個人プレー」(金融庁)だったようだ。

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