OJTの“限界を超える”花街の教え 一流に学ぶOJTの作法(2)

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判断基準の共有

経験が積み上がってくると、今までわからなかった自分の行動の不備がわかり、自分なりの対応もできてきます。この舞妓さんのキャリア形成は順調で、何の問題もないように思えます。

しかし、このままの流れで、より高いレベルでのお座敷での技能発揮ができるか、また、後輩のOJTのよい指導者になれるかというと、そうではないのです。そのことを、お母さんは教えようとしています。

今回の失敗を小さな失敗だと自分で決めたこと、その決定は本当に妥当なのでしょうか?業界標準に照らし合わせて、きちんと検証した結果の判断でしょうか?

さらに、ささいなことのように見えているが、その背後に重大な問題点が隠されていないでしょうか?

小さな失敗だと自分で決めて対応して報告しなかった舞妓さんの一連の行動から、指導育成のプロフェッショナルである置屋のお母さんは、これらの点を危惧して、短いですが含蓄のある言葉をかけていたのです。

何か失敗したことやその後のリカバーの行動といった現場経験は、個人固有のものです。では、それが業界標準と比較して妥当なものなのか、仕事経験が少なく個人の判断能力が未熟なうちは、妥当な判断を下せているとは限りません。
少し慣れてきた舞妓さんだからこそ陥りがちな、自分の経験だけに頼った行動の問題点を指摘されたのでした。そして、このお母さんの言葉には、今後、より広い視野を持った対応ができるように、そして将来のOJTの指導者になってくれることへの期待も込められています。

OJTの限界を超える

「失敗しました、それに対応しました、大丈夫でした、だから、問題ないと思います」

この連続からは、失敗が生じた原因を分析し二度と同じことを起さない、高付加価値のサービスは生み出されません。

舞妓さんの愛らしい笑顔、芸妓さんのあでやかさなど京都花街らしいサービスは、伝統的な衣装や立ち居振る舞いからだけ、醸し出されているのではありません。

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