レクサス、新型「IS」の真価 BMW、ベンツの牙城に挑む、トヨタの勝算

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こだわったのは走行性能。「運転することの気持ちよさを追求した」。小林氏はそれを「スイートスポット」という言葉を使って表現する。スイートスポットとは、ゴルフのクラブ、野球のバット、テニスのラケットなどで、ボールを最も効果的に打てるポイントだ。「ISは、スイートスポットにはまったときに“あ、今うまく運転できたぞ”と実感できる」という。ドライバーとクルマが一体となってクルマを意のままに操る感覚を味わえる、とでも言い換えたらいいだろうか。

新型「IS」の開発を指揮した小林直樹・製品企画主査

新型ISの開発では、さまざまな新技術の投入、あるいは技術改良がなされたが、走行性能を高めたうえでのポイントのひとつは、ボディ(車体)剛性の向上と軽量化という二律背反するテーマに挑んだことである。

ボディ剛性の高さとは、なかなか一言では言い表しにくいものの、イメージとしては運転者(ドライバー)からすると、クルマを走らせているときに道路の凹凸やカーブなどで車体がたわまず、ガッチリと包まれたような安定感があり、みずからの意図する操作と近い感覚で車体が反応する、などのような感覚である。クルマの運動性能を高めるには軽量化も大きなポイントだ。ただし、ボディ剛性を高めようと、たとえば鉄板を厚くすれば重量が増す。

最上級車「LS」で先行導入した技術を本格採用

そこでトヨタは溶接方法を工夫した。一般的なスポット溶接よりも細かいピッチで溶接できるレーザー溶接を採用し、さらに接着剤も使用することで、車体は軽くしたままで、たわみを抑えることに成功したのだ。もともとはレクサスの最上級車種「LS」のマイナーチェンジ(一部改良)で導入された技術を、新型ISで本格採用した。

「静けさだけがレクサスじゃないぞ」。小林氏は、新型ISの開発前に豊田章男社長から言われたこの一言が忘れられない。高級車といえば走行時の静粛性は重要な要素だが、新型ISは高級車の心地よさを損なわないレベルで、エンジンやマフラー(排気管)の音などは、スポーティさを意識して設計されている。

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