筋肉少女帯は、なぜカラオケで絶唱するのか 異色のプロモーションビデオ誕生の舞台裏

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今回は、タイアップで楽曲をつくること自体が大きな仕掛けといえる。しかし、細部をみるとマーケティング的なアイデアもたくさん埋め込まれている。

そのひとつが「DAM★とも」というシステムで「人から箱男(筋少×カラオケDAMコラボ曲)」を歌ってくれたファンや、限定盤のCDと『再結成10周年パーフェクトベスト+2』アルバムの限定盤を併せて購入したファンを、都内某所で行われるシークレットイベントに招待する、というもの。ファンにライブ感と特別感を味わえる「場」を提供する。

ファンにとっては、話題性豊富なコラボといえる。しかし、これが第一興商と徳間ジャパンの売り上げ増につながらなければ、打ち上げ花火で終わってしまう。ビジネス戦略は、どのように描いているのだろうか。

ライブの後はカラオケボックスへ

「ライブを楽しんだ後はカラオケボックスで余韻に浸る」を仕掛けることはできるか?

第一興商としては、この楽曲がたくさんリクエストされることが重要だ。その指標になるのは、リクエストランキングだ。

10月9日に本人映像と歌声をカラオケでそのまま楽しめる『まま音』で先行配信したところ、筋肉少女帯の楽曲で前週まで最高位だった曲を一気に抜いた。

DAMで配信される全楽曲の中でも非常に高いランキングでの初登場を果たしたという。リリース前、しかもまだYouTubeや一部メディアでしか公開されていない楽曲としては異例だ。「今後、CDが発売され、全国ツアーも始まるので、より一層のランキング上昇が見込まれる。これまでカラオケにあまり足が向かなかった客層を開拓することにもつながれば、ビジネス的にも成功といえると思う」(小倉氏)。

第一興商・編成企画部の小倉博之チーフ(左)と徳間ジャパンコミュニケーションズ・制作宣伝本部ディレクターの田中亮氏

「再結成10周年ライブの後に、ファンが近場のカラオケボックスに行って曲を追体験してくれるとうれしい。ライブ会場のそばのビッグエコーが満室になるかもしれない。このコラボでいろいろなノウハウを蓄積し、さらに面白い取り組みを進めていきます」(田中氏)。2人は取材を終えたあとにも会議室に戻り、話し込んでいた。実際に、次のプロジェクトが動き出しつつあるようだ。

CDの売り上げの減少傾向が止まらない中、バンドの命運はコンサートやライブ、そしてフェスへの動員が鍵を握っていると言われる。アーティストとカラオケメディアの融合によって、「ライブの後はカラオケボックスに行くのが常識」という新しいフレームを生み出せば、大成功といえるだろう。

高杉 公秀 フリーランス編集者

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たかすぎ きみひで

1966年、埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後、出版社勤務。週刊誌や月刊誌の編集部を経て、2010年独立。フリーランスとしてさまざまなジャンルの記事執筆、単行本の企画を行う。

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