超至福!京急「ビール電車」の大盤振る舞い キリンが電車内で宴を開いたワケ

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ビールは15リットルの樽13個が積み込まれた

今回のビール電車は、ビール飲み放題であることはもちろんのこと、もうひとつ大きな特徴があった。日ごろは一般客を乗せた電車が通ることのない、京急本線と大師線を結ぶ線路を走ることだ。電車は京急川崎駅を過ぎ、多摩川にかかる鉄橋の途中で停車。進行方向を変えると、高架の本線と地上の大師線をつなぐ線路をゆっくりと下り始めた。

「こんな線路があるなんて知らなかった!」「めっちゃ興奮!」と、すっかり上機嫌な乗客の歓声が車内に響く。ビールを片手にマニアックなルートに興味津々の乗客たち。だが、今回の参加者の多くはいわゆる鉄道ファンというより「ビール好き」の人々が多かったようだ。

「やっぱりキリンビールのイベントには来ないと」と力説する女性は、沿線にある会社の飲み仲間4人で参加。同じメンバーで横浜工場の「ビールづくり体験教室」にも参加したというビール好きの面々だ。その他の参加者も「工場見学には何度も行っている」「10月にリニューアルされた横浜工場にももう行った」といった人々が多い。「普段飲めない場所で好きなビールを飲めるのがうれしい」のだ。

ビール電車がつないだ縁

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京急川崎駅に到着したヘッドマーク付きのビール電車

この日列車に積み込まれたビールの樽は15リットル13個。1人2リットル少々という計算だが、途中で「足りなくなるかも」との懸念もあったほどだ。大師線の2往復を終え、解散となる京急川崎駅に着く頃には、2時間前には見ず知らずの他人だったはずの人々が「これから飲みに行こう!」などと会話を交わし、連れ立って川崎の街へと消えていくまでになっていた。

多くの乗客と乾杯し語り合った勝間田工場長は「とても感激してます。今日のお客さんがまた本当にノリが良くて。京急もキリンビールも好きという方が集まったんだと思います」。京急にとっても、今回のビール電車は従来の鉄道ファンとは異なる新たなファン層の開拓につながったようだ。「お酒の好きな方が多く、これまで京急に馴染みのなかった方にも来ていただけたと思う」と同社の担当者はいう。勝間田工場長は「第2弾ももちろんやりたいですね」と次の開催にも意欲を見せた。

日常の風景である通勤電車の車内がビアホールに生まれ変わる「ビール電車」。居酒屋やバーとは一味違う、走る車内でともにお酒を楽しむことで生まれる一体感は、鉄道会社にとっても新たなファンを増やす絶好の機会に違いない。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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