検証!「物言う株主」の尻馬に乗ると儲かるか アクティビストに買われた企業の株価は?

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アクティビストの要求によって株価の上昇や還元の拡大が起きれば個人投資家もその恩恵を享受できる可能性がある。アクティビストが株式を保有していることを知ることができるのは株式保有割合が5%を超え、大量保有報告書が提出されてから。その時点から現在までどの程度株価が上昇したのかを検証してみた。

平均上昇率79.7%!

主要なアクティビストが過去に大量保有報告書を提出しており、現在も保有している銘柄から、5銘柄ずつ無作為に抽出したものだ。

なお、損切りや利益確定で現在は保有していない銘柄は対象外で、保有期間中も株価変動に応じてトレードをしている場合がある。そのため、この騰落率は必ずしもファンドの損益とは一致しない。

現在、アクティビストのうち、エフィッシモとストラテジックキャピタル、レノは旧村上ファンドのメンバーが立ち上げたファンドだ。特に、レノは村上世彰氏が直接影響力を及ぼしているファンドだ。一方でタイヨウ・ファンドは10年以上前から日本で活動しており、2014年にはローランドのMBOにも参画。経営陣と対話を重視する「ゲスト株主」を掲げる。

ローランドのMBOに参画したタイヨウ・ファンド。 ブライアン・ヘイウッド CEO(2014年、撮影:今井康一)

全体の騰落率の平均は79.7%。ファンド別に見ると、騰落率に差はあるものの、どのファンドも平均2ケタ以上の上昇率だ。もっとも上昇したのはMCJで、株価は8倍以上になった。20銘柄中株価が倍増したのは5銘柄だ。

報告義務が発生した日で分類をすると、2012年までに義務が発生した銘柄の平均上昇率は196.6%と極めて高い。2013年以降の銘柄の平均上昇率は29.7%だ。これは、投資を開始して間もない銘柄ではアクティビスト活動の成果が出づらいこと、上昇し続けている銘柄はホールドし続けられやすいことに加え、アベノミクスによる株価上昇の恩恵を受けられたかどうかが反映されていると見られる。

相場全体の上昇による影響を補正するため、東証株価指数比較(TOPIX)との比較も行った結果、20銘柄のうち11銘柄がTOPIX騰落率を上回った。TOPIX騰落率の平均は20.1%で、アクティビスト銘柄の騰落率が大きく上回る結果となった。

また、アクティビストの株式保有は株主還元拡大の圧力となる。アコーディアゴルフは2014年にレノからの要求で200億円以上の株主還元を発表し、9割という配当性向も掲げている。また、宝印刷もストラテジックキャピタルキャピタルの大量保有発覚後、配当を大きく引き上げた。直近では、黒田電気が2016年3月期に年間の1株配当を前期比2倍以上にしている。

2016年に入ってから冴えない相場環境の中、アクティビストの突破力に乗ってみるのも一つの手かもしれない。

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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