「神田古本まつり」が本好きを魅了するワケ 本の世界に浸ると、いろいろなことが見える

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さらに、特定の人物でないチャールズからジョンに出した誕生日の祝い、少女バスターから友人の少女ジェーンに出した手紙という文例に挟まれて、何故か加藤清正が福島正則を花見に誘う手紙が文例に!

拝啓。新聞の伝ふる所によれば、嵐山の桜花目下満開の由、明朝前田、石田両氏と三人同所へ遠足致したくと存じ候。御同行如何に候や。八時まで三条大橋交番側に御待ち申すべく候。頓首。
四月一日 吉田町にて 加藤清正 
福島正則様

 

新聞や交番なんて当時ないでしょ!更には福島正則からの返事も!

御手紙ありがたく拝見仕り候。丁度明日の日曜を如何に過さばやなど考え居り候折柄にこれあり、無論同行大賛成に候。拝復。
四月一日 岡崎町にて 福島正則 
加藤清正様

織田信長が雑誌を注文

なんだこりゃ?!そして極めつけは以下の雑誌を注文する手紙。

拝啓。別紙米貨二ドル手形封入候間、ご査収下されたく候。右に対し、来る十二月号より一年間、サクセス雑誌ご送付下されたく候。草々。
一九一五年十一月十一日  日本尾張国清洲町一番地  織田信長
紐育市 サクセス社 御中

 

織田信長がサクセスのきっかけを求め、ニューヨークにまで触手を伸ばしていたとは、しかも20世紀に!・・・といったように、この本はツッコミどころが満載の内容なのである。

こういった訳で今回、神田古本まつりにはほんの僅かな時間しか参加出来なかったにもかかわらず、文学・ミステリ・珍本のジャンルで収穫を得ることが出来た。神田古本まつりは、人それぞれの楽しみ方がガッツリ出来る夢のイベントなのである。
 

古書山 たかし 古書蒐集家

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こしょやま たかし / Takashi Koshoyama

書籍、レコードなどの稀少な出版物を蒐集しているうちに、家の中は資料の山。その整理をめぐって家族との論争が絶えないのだが、それでも蒐集の手を緩めることはない、情熱の人。出張の折などには、古書店めぐりを欠かさない。「古書山たかし」は、もちろんペンネーム。実は会社四季報にもその名前が掲載されている上場企業の経営者だが、その正体はヒ・ミ・ツ。もちろん社業を軸に据えているので株主の皆様、ご安心ください。

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