新潟「野党勝利」で高まる解散総選挙の現実味 与野党とも次々に「禁じ手」を繰り出している

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「泉田知事は通産省時代の後輩で、二十数年前に一緒に仕事をしていた。だから泉田知事の言いにくいことを言う。泉田知事の後押しがなければ、米山氏は立候補を決断しなかった。昨日、泉田が退任の挨拶に官邸に行ってみたら、本来は約束していなかった安倍総理まで出てきて、1期目の初当選した時に応援してくれた面々がずらりとオールスターで顔を並べていたそうだ。まるでプレッシャーをかけられるような、相手候補を応援しろというまなざしを感じたそうだ」

実際に泉田知事は13日午後、知事退任の挨拶のために官邸を訪れた時、安倍首相から「当然、力を借りることもある。宜しくお願いしたい」と言われている。さらに自民党本部で二階幹事長からも、「泉田知事や後援会の力添えを得て自民党は必ず勝利し、知事と連携していろいろやっていきたい」と協力を求められたのだ。

要するに自民党とすれば、出馬すれば勝利は確実と言われた泉田知事の人気でもって挽回を図ろうとしたのだが、泉田知事に近い江田氏がこれを制したということになる。

安倍首相が池袋に行った意味

ただし、自民党は新潟県知事選に敗れたものの、すでに次の勝負に目を向けている。新潟県知事選の投開票が行われた16日の午後、東京・池袋駅前には数千人もの人が集められたのだ。

自民・公明のトップ、そして都知事。オールスターがそろった池袋駅前

彼らの目当ては小池百合子東京都知事、そして安倍晋三首相の演説だ。10月23日に投開票の衆院東京都第10区補選では、自民党公認の若狭勝氏の優勢が伝えられている。普通ならそのような状況で、わざわざ首相を投入しない。

しかも街宣に参加したのは、下村博文自民党東京都連会長を始め、菅原一秀同会長代行、山口那津男公明党代表、高木陽介公明党東京都本部代表という主要なフルメンバー。さらに自民党や公明党の都議や区議なども総揃いしている。かつて記者会見で「若狭氏を応援しない」と言明した高野之夫区長でさえ駆け付けたのだ。

この筋書きを描いたのは自民党の二階幹事長だ。11日の若狭氏の第一声で、二階氏は「ここに来る途中に安倍首相に電話したら、『16日に池袋に行く』と言った」と述べたというのは前回記事で報じたとおりだ。

これは新潟県知事選での敗退をも視野にいれ、その後の影響を最小限に抑えるために打った次善策に違いない。首相が街宣するとなると、翌日の新聞の紙面も新潟県知事選の結果ばかり報じるわけにはいかなくなるからだ。

このように、与党も野党も次々と「禁じ手」を使い、状況はめまぐるしく変わっている。ここまで選挙に熱が入る状況を見る限り、やはり解散総選挙が迫っていると見たほうがいいのかもしれない。
 

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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