頼みは銀行とアップル。新生シャープを覆う霧 資金繰りと業績改善のメドはついたのか

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シャープは危機前にコマーシャルペーパー(CP)による直接金融に頼っていたが、業績悪化で新規のCP発行を閉ざされた。そのため、運転資金やCP償還資金を、みずほコーポレート銀行と三菱東京UFJ銀行に頼ることとなった。さらに昨年9月に、12年度下期の営業黒字化を条件に2行が3600億円の融資枠設定に応じたおかげで前期は乗り切った。が、その期限はこの6月末までだった。

自己資本比率が13年3月末に6%にまで低下したシャープにとって、頼みの綱は銀行のみ。前上期の減損などの効果もあり、前下期は営業黒字の公約を達成。「製造業の雄であるシャープをしっかり支える」(みずほコーポレート銀の佐藤康博頭取)と、2行は15年度末までの3600億円の融資枠延長と、1500億円の追加融資枠も認めた。

「われわれの最大の懸念事項だった、資金繰りにメドがついた」。奥田社長は安堵の表情を浮かべたが、リスクと隣り合わせの巨額支援をする2行は、それぞれシャープに取締役を送り込み、管理を強める。

「今回の中期計画は、銀行とうまく話ができたから、とりあえず生き残り宣言ができただけ」。BNPパリバ証券の中空麻奈投資調査本部長はそう指摘する。実際、合計5100億円の融資枠の条件は、「中期計画の達成」(大西徹夫専務)だが、初年度の最終黒字化、15年度の純利益800億円とも道のりは厳しい。

収益向上策としてシャープが示したのは、勝ち目がある市場へのシフト、液晶パネル事業の立て直し、固定費削減など。中でも中計達成のカギを握るのが、液晶事業の再建だ。

同事業は12年度に1389億円の営業赤字を計上するなど、現在の経営危機を招いた元凶である。それでもテレビと共に、「一本足打法」といわれるほど傾注してきた事業。「液晶事業は間違いなく今後も核にする」。高橋次期社長が強調したように簡単に見放せるはずもない。

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