企業と学生の攻防、「内定者フォロー」の実態 複数内定者対策に必死、学生との温度差も

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「会社・工場見学」を内定者向けに実施している企業はわずか14%である。それに対して、学生側は文系で19%、理系では23%が望む。理系学生の要望が比較的高いのは、工場見学をすることで自分の研究がどう仕事に活きるのかを知ることができるだけでなく、どんな設備や体制で進められているのか、事前に確認しておきたいからだろう。

選考の過程で企業に行っても、面接などは特定の会議室などで行われ、社員がどのようなところで仕事をしているのかを見ることができないケースがほとんどだ。しかし、内定者となれば話は別。特に、内定者に自社をより深く知ってもらいたいという企業なら、オフィス見学などの施策を取るだろう。会社・工場見学などを行って、複数社内定者に自社を選んでもらおうとする企業は、今後増えていくと思われる。

文系学生の要望として多かったのが、「資格取得支援」。資格の詳細は聞いていないが、会社が支援してくれるなら資格を取りたいということだろう。ところが、企業側は資格取得支援を実施しているところはわずか5%に過ぎない。入社後に必須の資格であれば入社後に取得させればよいと考えているからだ。

とはいえ、外回りをする営業職では普通自動車免許の取得が望ましいなど、選考基準ではなくとも、ビジネスの現場では必要となる資格もある。自分が志望する仕事で必要だとわかっているならば、学生時代に取得しておいてもいいかもしれない。

内定者フォローに参加しないとどうなる?

内定者の立場は、文書による正式な採用内定通知を受け取って、入社誓約書などを提出した場合、法的には「始期付・解約権留保付労働契約」であると考えられている。つまり労働契約ではあるものの、開始が入社時で、それまでの間、企業は解約権を留保しているものという意味だ。そこで学生にとって気になるのは、内定者フォローに参加や対応ができなかったら、「内定取り消しになるのでは」という点だろう。

新卒の場合、内定者フォローの施策に参加や対応ができないことを理由に、内定が取消されることはない(採用条件として研修参加が明記されている場合を除く)。ただし、入社誓約書の提出時に研修などの説明があり、その時点で参加できないと表明していなければ、参加に合意したと受け取られる。

内定者フォローのスケジュールで気になることがあるなら、まずは企業人事に連絡して相談するのがお勧めである。人事にとっては、内定者は手間をかけて、さまざまな困難を乗り越えて採用した大切な人材なので、親身になって相談に乗ってくれるはずだ。

丸島 美奈子 ProFuture HR総研 研究員

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まるしま みなこ / Minako Marushima

IT系ベンチャーキャピタル、人材・組織コンサルタント、タレントマネジメント・システムコンサルタントを経て、2014年HRプロ(現ProFuture)に入社し現職。企業の採用、人材育成、システム、法改正等、人事領域に関連する幅広い調査・分析を行う。企業人事や人事支援サービスへのインタビューも多数行っている。日本アクションラーニング協会 認定シニアALコーチ、TCCマスター・キャリアカウンセラー、SSUG(スキル標準ユーザー協会)認定コンサルタント。著書『優良企業の人事プロに選ばれる人事支援サービス100選』。

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