中国人観光客は「毒」か「薬」か? ツーリズムにも「チャイナリスク」

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それにしても難しいのは中国人観光客との付き合い方である。これは、どの国にとっても悩みのタネだ。観光振興という意味では、当然、中国人に来てほしい。日本は観光立国を目指し、2020年までに現在の800万人の外国人観光客を2500万人まで増やしたいとしている。これはどう考えても中国人をアテにした数字としか思えない。

その旺盛な消費意欲はありがたい。韓国、香港、台湾の人たちは日本によく来てくれるが、東京、大阪、箱根、京都などは行き飽きていて、日本人でも行きにくい地方の穴場に足を運ぶ傾向がある。彼らの目標は消費ではなく「行く」こと。電器店やドラッグストアで買い物に励む中国人よりも、旅行で使うおカネは格段に少ない。

そして、日本を含めて東アジアの国々が海外旅行に日常的に行くことができる中流社会の増加がほぼ見込まれないのに対して、中国では膨大な「未来の顧客」が誕生し続ける。そんな有望なマーケットに期待するな、というほうが難しい。

すべては中国政府のさじ加減ひとつ

一方で、チャイナリスクという言葉があるが、観光においてもチャイナリスクは確かに存在している。

念頭に置かなくてはならないのは、いったん大量に中国人観光客を受け入れた途端、その観光地の性格が大きく変わってしまうことだ。台北故宮の入場料値上げ問題も、それに端を発している。声が大きいことや、見物やホテルでのマナーの悪さは文化の問題でもあるので、協力を求めてもなかなかすぐには変わらないだろう。

また、国民の海外旅行先について、事実上、管理制度を設けている中国政府がその旅行先をコントロールすることができることも大きい。つまり増やすも減らすもさじ加減ひとつなのである。

尖閣諸島問題で日中関係が悪化してからは、日本側への中国人観光客が激減したが、これも政治の影響が観光に及んでしまう典型的なケースだ。

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