アデランスを追い詰めたかつら市場の"激変" MBOによる上場廃止の裏に「女心の変化」

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アデランスの既製品「フォンテーヌ」の店舗。女性用かつら市場で大きな変化が起きている(記者撮影)

一度は投資ファンドによる再建を拒んだアデランスが、今度は自ら救済を求めた。10月14日、かつら大手のアデランスは、MBO(経営陣が参加する買収)を実施すると発表した。9月末に航空会社スカイマークなどの再建で知られる投資会社のインテグラルが100%出資する子会社を設立、同社を通じてアデランス株のTOB(公開買い付け)を実施する。

買い付け期間は10月17日~11月29日。取得価格は一株あたり620円と、14日終値(480円)より29%高い価格で買い付ける。少なくとも過半以上取得してからTOBが成立した後は、アデランス創業者の根本信夫会長兼社長と津村佳宏副社長が同社に50.1%出資する格好で、MBOを実施する。MBO後も引き続き、根本社長らは経営陣に留任。インテグラル側からも役員を就任させる考えだが、具体的な人数や時期、候補者については未定としている。

会社を乗っ取られた苦い経験

アデランスといえば思い出すのが、「モノ言う株主」として日本企業を震撼させた米スティール・パートナーズとの攻防だ。大株主だったスティールの株主提案が通って”乗っ取られた”結果、根本社長は解任され、スティール側が送り込んだ大槻忠男氏が社長に就任。社名をユニヘアーに変えて再建に取り組んだが結局低迷したままで、2011年には大槻氏を解任し、再び根本社長体制に戻っている。

この苦い経験から外部による「干渉」には抵抗感がひときわ強いはずだが、今回は根本氏らが自ら佐山展生氏率いるインテグラルのドアをたたいた。腹を決めたのは8月。「第1四半期(2016年3月~5月期)と第2四半期(6月~8月)の状況を見て、インテグラルにMBOの相談へ行った」(アデランス)という。

確かに同社の業績は急悪化している。14日に発表した第2四半期の売上高は前年同期比5%減少、営業利益も1.6億円と前期比6割以上も減っている。通期の見通しも下方修正し、6.5億円の営業利益を出す計画から一転、3.7億円の営業赤字に沈む見通しとなった。加えて、今期は為替差損の影響もあり、最終損失19億円となるため、年間15円出すはずだった配当も、一気に無配となる公算だ。

2014年2月期には36億円の営業利益を出していたことを考えると、激烈な悪化ぶり。その背景にあるのはかつら業界の急変だ。

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