マリノスは、なぜ好調なのに“赤字”なのか 横浜F・マリノス、嘉悦朗社長に聞く(下)

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――成績を恐れず、スタイルを確立したことが、今の好調につながっているわけですね。

樋口靖洋が監督に就任したとき、彼は「チームスタイルを確立したい」と公言しました。

嘉悦朗(かえつ・あきら)
横浜マリノス社長
1979年一橋大学商学部卒業後、日産自動車に入社。ゴーン体制の下で、人事部主管、組織開発部主管、理事、執行役員を歴任。クロス・ファンクショナル・チームの主力メンバーとして活躍した。その後、本社移転プロジェクトのリーダーを経て、2009年、横浜マリノスの社長代行に就任。2010年より現職。

スタイルを確立していっても順位は簡単には上がらないかもしれない。けれど、昨年は本当に狙いどおりの曲線を描いたんですよ。最初の7試合は勝てなかったんですが、8試合目から内容がよくなり、そこからぐーっとチームの調子が上がっていった。昨年の残り9試合は5勝1敗3分。今年は開幕6連勝。今はこのマトリックス図の右上にいるような気がするんですよ。

樋口監督とは、そのあたりの話がぴったり合った。スタイルを確立して、人が入れ替わっても「マリノスの戦術」をみんなで共有できるチームにしようじゃないか、と。

――そうだったんですね。

分析というほどのものではないんですけど、あるときふと考えて、縦軸に順位、横軸にクラブの強化費を取って、マトリックス図を作ってみたんですね。Jリーグには強化費が20億円のクラブもあれば、5億円のクラブもある。普通に考えれば、強化費をかけるほど順位が上がって、各クラブをプロットしたら右上がりの直線的な分布になりそうじゃないですか。Jリーグも一昨年あたりまではそうだった。けれど、昨季は違ったんですよ。

――どんな分布だったんですか?

一昨年前あたりまではたくさんおカネを使っているところが上にいて、使っていないところは降格した。でも、昨年は平均的な強化費の広島が優勝して、仙台が2位になった。3位の浦和はトップクラスの強化費ですが、5位の鳥栖は平均よりも少ない。通常の線から外れて好成績を残すチームが多かったのです。

そういういい方向で線から外れているチームというのは、スタイルがはっきりしているんですよ。チームスタイルをしっかり作って、それに合う選手を取り、育成すれば、おカネをかけなくても上位にいくことは十分に可能。

今、マリノスではチーム作りの面でも、PDCAサイクル(計画・実行・評価・改善のサイクル)をしっかり回そうとしている。プロサッカークラブというのは通常のビジネスとは違うと思っていたんですけど、基本は一緒なんですよね。今のところその仮説が、だいぶ現実化してきている気がします。

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