北朝鮮を突き動かす、国内の“脆弱性”

ダニエル・スナイダー氏に聞く(上)

夫人とサッカー観戦を楽しむ金正恩。一連の強硬姿勢の裏には何があるのか(写真:KCNA/Xinhua/Photoshot/アフロ )
北朝鮮情勢が緊張感を増している。北朝鮮の行動の背景には何があるのか。米国、韓国らは北朝鮮問題にどう対処しようとしているのか。東アジア情勢と米国の東アジア政策に詳しい、スタンフォード大学アジア太平洋研究センターのダニエル・スナイダー副所長に聞いた。

 

――北朝鮮の行動の背景にはどのような狙いがあるのか。これは新政権が権力基盤を固めるための戦術なのか、それとも、外交上の妥協を引き出すための、抜け目ない戦術なのか。

「あれかこれか」の二者択一的状況ではない。私は基本的には、北朝鮮の行動の背景にあるのは国内事情だとみている。

最大の要因として、北朝鮮の経済システムが危機的な状況に陥っている。北朝鮮の硬直的な命令経済は、成長に必要な資本を生み出すことができず、国民にとって最も基本的なニーズすら満たせていない。何らかの形で市場刺激策を試してみたり、一部で経済を開放したりするなど、小手先の改革を試みる小さな動きはこれまでもみられた。経済開放について言えば、相手は主に中国だ。

ある意味では、まだ始まったばかりのこれら試みが、国内の危機をかえって悪化させてきた。指導者たちは、国全体にわたる問題の解決に向けて、改革に着手することに乗り気ではない。だが、ある程度は消費財や食糧や燃料が流入するのを認めざるをえないため、外からの影響に否応なくさらされてしまう。

何十万人の北朝鮮人が中国へ出稼ぎに

北朝鮮では、体制に反対する動きは見られない。しかし、外に向けて国を開く必要に迫られているという事情もあって、社会的、経済的な変化が生まれている。それを示す証拠はたくさんある。

まず何十万人もの北朝鮮国民が中国で働いている。その多くが、中朝国境を行き来している。また今日では、およそ9万人の国民がロシアで仕事を得てカネを稼ぎ、北朝鮮に送金している。中国へ行って商品を買い、国内に持ち帰ってさばくシャトルトレーダー(担ぎ屋による個人輸入)も多い。私は、1990年代前半に旧ソ連に住んでいたが、当時のソ連でこれと同じ現象を目撃している。

人々が国境を超えて行き来することによって、外の世界に関する情報、より具体的には韓国についての情報が入るようになった。ますます多くの北朝鮮人が、韓国のテレビドラマや映画にアクセスできるようになっている。ドラマや映画は、DVDとして入ってくる場合もあれば、ダウンロードされることもある。一部の携帯電話は国境をまたいで通じるので、携帯電話があれば、中国に行って働いている家族と連絡を取り合うこともできる。

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