阿部寛、唐沢寿明、織田裕二が経た挫折と成功 三者三様の名優に学ぶビジネススキルの本質

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次は、「THE LAST COP/ラストコップ」主演の唐沢寿明さん。30年の昏睡から目覚めた時代遅れの刑事という異色の役で、「デカなのか、バカなのか?」というキャッチコピーのとおり、派手なアクションを交えたハチャメチャな事件解決が見物の作品です。

最近の唐沢さんは、「とと姉ちゃん」(NHK)でスカートを履くエキセントリックな天才編集者、「ナポレオンの村」(TBS系)で限界集落を再生するスーパー公務員、「TAKE FIVE~俺たちは愛を盗めるか~」(TBS系)で窃盗団のリーダーを務める大学教授、映画「スーツアクター」では25年の経験を持つスーツアクターなど、“ムチャぶり”とも言える超難役ばかり。それらを涼しい顔でこなしてしまうのは、唐沢さんの過去に秘密があるのです。

唐沢さんは俳優になるために高校を中退したものの仕事がなく、数々のアルバイトや裏方のスタッフ、特撮番組のスーツアクターなどをしていました。それどころか、水商売の客引きをしていた過去も隠すことなく、笑い話にしています。

そんな10年以上の下積みを経て、“さわやかでスマートな好青年”というキャラクターできっかけをつかんだ唐沢さんは、1992年の「愛という名のもとに」(フジテレビ系)でブレーク。さらに、「ホームワーク」(TBS系)、1994年の「妹よ」(フジテレビ系)で、そのイメージを盤石なものに固めましたが、徐々にそれが足かせになっていきます。

似た役柄が増えた俳優生活を打破するべく、唐沢さんが挑んだのは、次々に自分のイメージを上書きしていくこと。2000年の「ラブコンプレックス」(フジテレビ系)ではハイテンションで神出鬼没な秘書室長、2003年の大作「白い巨塔」(フジテレビ系)では外科医・財前五郎、2005年の「ハチロー~母の詩、父の詩~」(NHK)では昭和の名詩人・サトウハチロー、2006年の「小早川伸木の恋」(フジテレビ系)ではかつてのさわやかなイメージを覆す不倫男を演じました。

その他にも映画「20世紀少年」の主人公ケンヂ、映画「CASSHERN」の悪役ブライキング・ボスなどの実写版にトライしたほか、「不毛地帯」(フジテレビ系)、「ルーズヴェルト・ゲーム」(TBS系)、映画「杉原千畝 スギハラチウネ」などの「骨太な大作なら唐沢」という声があがるほどの存在感を醸し出しています。

自分の型や常識にとらわれない

唐沢さんは、「これは自分らしくない」「○○は邪道だ」などと自分を型にはめず、愛好するブラックミュージックのような脱力した身のこなしで、次々に届くオファーに応えていったのです。型や常識にとらわれない人は、周囲の人々に「あの人なら受けてもらえるかも……」という期待感を抱かせ、さまざまな機会に恵まれやすいもの。今作でも唐沢さんは53歳ながら激しいアクションに挑んでいますが、それも「50代になったからもういいかな」という自分の型や常識にとらわれていないからでしょう。

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