QE3は縮小方向、問われる金利上昇抑制 5月FOMCではQE3運営の裁量の幅を広げたが…

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雇用統計や小売売上高速報の結果を受けて、米国の長期金利は5月初めから20bpほど上昇した(5/1~16)。QE3の縮小・停止が視野に入ったことは、最初の利上げ時期の前倒しをも示唆する。FOMCは、長期金利の動向にこれまで以上に神経質にならざるを得ないだろう。

長期金利上昇とストック・ビュー

量的緩和が長期金利に及ぼす影響は、FOMCが総額でどれだけ証券を購入するかに依存すると言われてきた。いわゆるストック・ビューという見方であり、バーナンキ議長やイエレン副議長等が支持している。そこで「QE3の早期縮小・停止が視野に入ったことで、購入総額の“期待値”が縮小し始めた」と考えると、ストック・ビューの立場から最近の長期金利の上昇を説明することができる。さらにストック・ビューによれば、FOMCが保有証券を積極的に売却するなどによって残高を急激に減らさない限り、長期金利の上昇を抑えられることになる。

しかし現実はそう甘くないかも知れない。オペごとの購入額が日々の長期金利に影響を与え、オペを縮小したり、停止したりするだけでも長期金利に上昇圧力がかかるおそれがあるためだ。これはストック・ビューに対してフロー・ビューと言われる見方である。FOMCの中でフロー・ビューに対する表立った支持者はいないが、QE3の規模を「次第に減らしていく」(tapering)という言葉が高官の口から頻繁に聞かれるという事実は、フロー・ビューに立った“市場への思いやり”を表している。

さらに米国経済のファンダメンタルズが大きく改善している点も、成長期待を背景にした長期金利の急上昇を招き易い。しかし金利の急上昇はどんな場合でも“悪い”金利上昇だ。売りが売りを呼び、健全な金融機関の体力を奪ってしまいかねないためである。

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