佐賀県

「立地してからがスタート」
それが佐賀流の企業誘致
「佐賀に来てください」ではなく「佐賀と一緒に発展しましょう」

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このほか、佐賀県では、企業誘致に特に力を入れている市町を「特区」として指定し、県と市町が一体となって企業を支援する独自の制度も設けている。現在、特区に指定されているのは全20市町中11市町。県の担当者は「全市町が特区に指定されるようにしたい」と意気込んでいる。「優遇策」や「支援」というと金額ばかりに注目してしまうが、山口知事はこうも言う。

「補助金などの額や規模だけでトップレベルと言っているのではありません。私たちがいちばん自慢したいのは、企業に寄り添う〝心〟です。自治省(現総務省)に勤務していた時、『誘致の時は大事にされたけれど、いざ立地した後はもう冷たいもんですよ』という企業の声をよく聞きました。私たちは、誘致した企業と県が『一緒に発展していきましょう』というのが基本的スタンスですから、立地した後もしっかりフォローアップします。立地したから終わりではなく、立地してからが本当のスタートなんです」

そうした県の姿勢をよく表しているのが「パーマネントスタッフ制度」だ。どの自治体でも、職員は定期的に異動するのが通例。そのため誘致を担当した職員が、企業のことをよく理解し、ニーズをしっかり把握したころに異動になってしまうということもしばしば起こる。その問題を解決するため佐賀県には企業が希望すれば、誘致を担当した職員が他部署に異動した後もずっとその企業の窓口役を兼務する仕組みがあるのだ。この制度を利用している企業は現在73社にのぼるという。「顔なじみだから連絡しやすいし、うちのことをよく知っているから、相談しやすい」と好評だ。

抜群の交通アクセス
福岡にも近接

山口知事が冒頭で言及した、交通の便、住みやすさも見ていこう。空への玄関口となる九州佐賀国際空港は佐賀駅から車で30分と市街地にも近く、羽田便も1日5往復と本数も十分。それでいて、隣県にある福岡空港、長崎空港も佐賀市から車で約1時間という立地はBCPを考えるうえではプラスになる。また、佐賀県の東に位置する鳥栖JCTは九州のクロスポイントと言われ、九州のどこへ行くにも便利だ。さらに、伊万里、唐津と二つの重要港湾を抱え、アジアへのビジネス展開もしやすい。陸海空、すべてのアクセスに佐賀県は優位性を持っているのだ。

住みやすさは、東洋経済新報社『都市データパック』が行った「住みよさランキング2016※1」九州・沖縄ブロックで、3位鳥栖市、8位小城市、11位神埼市、14位武雄市、15位佐賀市と、トップ20に佐賀県の5つの都市が入っている。そのほかにも、延長保育実施率全国1位※2、10万人あたり一般病院数全国5位※3と住みよさを示すデータもある。そして九州の中心都市、博多まで佐賀駅から特急で約35分。地域の住みやすさに加え、都市へも気軽に行ける距離というのは、実は佐賀の大きな魅力でもある。

「誘致した企業が定着することには自信があります。フォローアップへの支援は惜しみません」(山口知事)

佐賀に注目が集まるのは、かつてからあったアクセスの強みなどに、県の施策と山口知事の発信力が加わったことによるもの。佐賀の「再発見」はこれからも続く。

※1 「住みよさランキング」とは、公的統計をもとに、813都市(全国790市と東京23区)を「安心度」、「利便度」、「快適度」、「富裕度」、「住居水準充実度」の五つの観点に分類し、採用15指標をポイント化、ランキングしたもの
  ※2 厚生労働省、2013年度
  ※3 厚生労働省医療施設調査、2014年10月

佐賀県は「共進化」している

東京大学大学院
総合文化研究科教授
松原 宏

2008年に経済産業省の企業立地促進に関するワーキンググループで座長を務めたのですが、私はその時に佐賀県の「パーマネントスタッフ制度」を高く評価していました。実はどの自治体でも、企業の窓となる担当者が異動で代わることが課題とされています。担当者が変わっても対応しやすい「工場カルテ」という仕組みを整えている自治体もありますが、佐賀県は人材を生かすことでこの課題を解決しています。2004年の制度創設以降、今や利用企業が73社あるというのは活用されている証しですね。

この30年で産業の世界は大きく変わり、工場のあり方が見直されていますが、そんな現状で私が提唱しているのが「共進化」です。これは自治体や地域と、その地にある企業・工場とが互いに影響を受けて進化することを指しています。企業に対してさまざまな優遇策を講じたうえで、「パーマネントスタッフ制度」などのように知事が言う「寄り添う心」を持つというのは、「共進化」にとても通じています。

 

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