LBOファイナンスの変調 −−「貸し手優位」の市場へ大変貌 既投資案件の評価に厳しい目

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既投資案件に厳しい目 08年は大型ディールも

不動産と並び、LBOに対する金融庁の姿勢が厳しくなっているという見方も出てきた。「利益相反や買収価格の妥当性など、金融庁がLBOに注目している」(LBOファイナンス関係者)という指摘もある。

レックス・ホールディングス、サイバード、すかいらーく--。いずれもLBO市場に過熱感が漂っていた06年から07年にかけての案件で、買収ファイナンス関係者の話題に上る企業群だ。

たとえば、レックスは06年12月、アドバンテッジパートナーズが約600億円を投じて買収(TOB)。三井住友銀行がシニアのリードアレンジャーを務めた。傘下には「牛角」などを展開するレインズインターナショナル、コンビニチェーンのエーエム・ピーエム・ジャパン(am/pm)、それに高級スーパーの成城石井を抱える。小松崎行彦社長は「am/pmは197店の不採算店を閉鎖した。成城石井や牛角と比べると、通期ではまだ営業赤字で、改革は道半ば」と認める。

買収後すぐに業績が下方修正される異例の事態となったため、劣後ローン参加行の間に先行きを不安視する声が上がったようだ。アドバンテッジのシニア・パートナー、永露英郎氏も「金融機関から継続支援を受け、コベナンツに抵触することもない。ただ、ターンアラウンド型LBOに慣れていないため、四半期ベースの業績に敏感な方からそういう反応が出る」という。5年後とみられるイグジットに向け、3社一体、もしくは個社ごとの上場など、さまざまな形態の出口戦略を模索中だ。

一方、08年度に入り、1000億円を超える大型案件として注目されているのは、日本板硝子とHOYAの合弁・NHテクノグラスや大東建託。中でも、買収額9000億円ともいわれる大東建託の案件が成立すれば、LBOファイナンスとしては過去最大級となる。エートス・キャピタル、森トラスト、ユニゾン・キャピタルでつくる連合が優位とされるが、「都心に保有する不動産の価値はあるが、当社の事業モデルが本当に永続的なのか疑問」(LBO担当者)と、過大な借金を抱えることになるLBOの成否を疑問視する声も上がっている。

金融市場の混乱を受け、外資系投資銀行の不動産証券化部隊では今年初、リストラが相次いだ。国内LBOプレーヤーにも淘汰の始まりを告げるベルが鳴り始めたようだ。

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