日本の国債市場の混乱は、もっと激しくなる バーナンキ議長が、QE3の縮小を示唆したら要注意

拡大
縮小

こうした状況を聞いていると、FRBはそろそろQE3(月850億ドルの証券購入)の縮小に入るべきではないかとの印象を受ける。しかしながら、全米規模で見渡すと、中低所得層の賃金・雇用機会の改善はまだまだ遅れている。FRBの緩和策は資産・所得格差を大きくしているが、それゆえ金融緩和策を転換するタイミングの見極めには困難が伴う。住宅ローン金利が上昇してしまうような政策転換を今FRBが行ったら、中低所得層は生活が圧迫される恐れがあるためだ。

「バズーカ砲」緩和で安全度が低下した国債市場

 日本では4月前半に続き、5月前半にも国債市場が再び混乱を見せた。

「異次元」の量的質的金融緩和策が4月4日に決定されてから、改めて確認されたのは、日本の国債市場はボラティリティに対して構造的に非常に脆弱だということである。裏返して言うと、日本政府のこれまでの安定的な国債大量発行は、市場の変動が小さいことが前提で可能となっていた。しかし、「バズーカ砲」緩和策によってその前提が崩れ、国債の最大の購入者である国内機関投資家にとって日本国債の安全度は低下してしまった。

日銀が4月26日に開催した市場関係者向け説明会でも明らかに示唆されていたが、近年の日本ではフィリップス曲線が極端に寝ているので、その上方シフトが突然起きるような国民のマインド転換がなければ、2年後からの継続的なインフレ率2%は実現できない。

そのために日銀は量的質的緩和策によって、日本経済が「緩やかなデフレ均衡」からジャンプするように仕向けた。ジャンプが大きくなるように「バズーカ砲」的な緩和規模によって市場にサプライズを発生させた。サプライズは外為市場には有効だが、国債市場では金利を暴れさせた。金利の市場にとっては予測可能性が大事だからである。

「異次元」緩和策決定前日の4月3日の5年国債は0.135%、10年国債は0.55%だったが、4月15日の引け値はそれぞれ0.42%と0.87%だった。景気回復観測、インフレ予想の上昇に裏付けられた自然な国債利回りの上昇ならば、通常は経済は受け止めることができる。しかし、実体経済の改善が顕在化する前に金利上昇がより激しくなると、景気回復の勢いが殺がれる恐れがある。「名目金利が上昇しても、実質金利は低下しているから問題ではない」と言い切れるほどの状況にはまだなっていない。

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