日本企業の「残業好き」が崩壊する意外な理由 気鋭の経済学者が読み解く「ライフ・シフト」

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――他に、テクノロジーによるどのようなサポートが考えられるでしょうか。

SNSのようなツールが発達すると、社会人になると疎遠になりがちだった学生時代の友人のような人たちとつながっていられるようになる。そういうゆるいネットワークが、いま抱えている問題を解決してくれることがあるかもしれません。特に、お互いの共通点が少ない「弱いつながり」が、意外にも役に立つことがあるのです。

企業も、こうした「弱いつながり」の社内ネットワークを活かす余地があると思います。ずっと長い間、あるいはいま現在もつながっている「強いつながり」の人は、あなたと同質的である、つまり似た者どうしの場合が少なくありません。そのため、あなたと同じように解決策を見いだせず、問題だけを共有してしまいがちです。

一方、「弱いつながり」の強みは、あなたと同質的でない分、新しい考え方やあなたにはないネットワークを持っているということです。大きな移行や発想の転換を実現したいという場合は、「弱いつながり」のほうが、「強いつながり」よりも高い資産価値を持つかもしれません。

最近はやりのシェア・エコノミーも、新しいテクノロジーが生み出したものです。シェア・エコノミーと100年ライフは、とても相性がいいと思います。モノを自分で所有するのではなく、必要な時に借りる、というライフスタイルが定着すると、場所やおカネに縛られず、より身軽に行動できるようになるからです。

自分にとって適切なタイミングや場所で仕事ができるようになれば、選択肢が増えます。シェア・エコノミーが浸透していくと、これからの人生は、自然とマルチ・ステージ化していくのではないでしょうか。

もちろん、そうは言っても、世界はなかなかフラット化せず、特にクリエイティブ・クラスは都市に集積するという議論もあります。しかし、テクノロジーがさらに進歩して、私たちがそれを十分使えるようになれば、1カ所に集積するメリットは徐々に薄れていくのではないでしょうか。それぞれが離れた好きな場所に住みつつ、地理的に離れていてもコラボレーションができる。そういった可能性も十分にあると思います。スカイプなどのツールは、すでにある程度はそれを可能にしていますよね。

「ありうる自己像」を広げる

――100年という時間のなかには、そういう変化も入ってくるということですね。

そうですね。そう考えると、100年ライフというのは、幅広い関心や好奇心を持った人には、とりわけ良い時代かもしれません。だって、複数のキャリアを歩めるわけですから。若いうちに努力して、老後はそのときの蓄積を食いつぶしていくという3ステージモデルの人生設計では、100年ライフはもたないでしょう。人生の選択肢が増える時代には、幼いうちに関心や好奇心をはぐくむ教育も必要になるかもしれません。

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