賞味期限ルール見直しで、商慣習は変わるか 3分の1ルール見直しでメーカーと小売りに温度差

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消費者の意識変革がカギ

日本で毎年廃棄される食品(可食部分)の量は、約500万~800万トン。これは世界全体の年間食料援助量の約2倍に当たる。家庭での食べ残しもあるが、流通段階での廃棄が約半分を占める。

食品の廃棄を増やす一因が3分の1ルールとの批判はこれまでもあった。ただ、できるだけ新しい商品を販売したい小売りの意向もあり、見直し機運は盛り上がらなかった。それが、東日本大震災で弊害があらためて浮き彫りになったことで、業界を超えた取り組みにつながった。

今回の実験では、納品期限を賞味期限の2分の1に延長する。3分の1から2分の1にすることで、商品によっては未出荷のまま納品期限を迎える量を6割削減できるとメーカー側は試算する。廃棄費用が減らせるうえ、無駄な生産量を減らすこともできるため、メーカーのメリットは大きい。

一方、大手小売りの幹部は「結局、小売りの側での見切り値下げや廃棄が増えるのではないか」と懸念を示す。別の大手小売りも「新しい商品が欲しいという客もおり、(納品期限を延長して)本当に大丈夫なのか、実験でしっかり見極める必要がある」と慎重な姿勢を崩さない。

農林水産省・食品産業環境対策室の長野麻子室長は「日本の消費者は鮮度が高い商品を好む傾向が強い」と話す。消費者が賞味期限まで余裕のある商品を選ぶ以上、納品期限を延長すれば販売期間が短くなるだけに、小売りの不安ももっともだ。

今後は、業界の取り組みだけでなく、消費者の意識変革を促すことも必要になりそうだ。

(撮影:尾形文繁 =週刊東洋経済2013年5月18日

平松 さわみ 東洋経済 記者

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ひらまつ さわみ / Sawami Hiramatsu

週刊東洋経済編集部、市場経済部記者を経て、企業情報部記者

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