セルジオ越後「日本人は現実が見えていない」 「日本代表は強い」はファンの錯覚でしかない

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日本はそれが多いから、ブームで終わってしまう。ブラジルでは、ワールドカップで活躍できなければ、CMから降ろされます。本業であるサッカーで活躍できない選手をCMに使い続けると、「なんで、アイツを使っているんだ!」というクレームが入るので、逆にその企業のイメージダウンにもつながってしまいます。

本当に勝ちたいなら、変える必要がある

――個人個人が疑問を抱き、主張しなければ、状況は変わりそうにありません。

メディアは金儲けをして、ファンは安易な感動を得ているだけ。これではスポーツ選手の地位も上がらないし、スポーツを楽しむこともできない。本当に勝ちたいなら、変える必要があるけれど、日本の人々が変えてまで勝ちたいと思っているとも思えません。たとえば、バレーボールは主要な世界大会が日本でしょっちゅう開催されていて、前座としてアイドルのコンサートが開かれ、会場を埋めるのもそのアイドルのファンだったりします。

でも、オリンピックは海外で開催される。本当に強くなり、オリンピックでのメダル獲得を目指すなら、日本でばかり戦っていても生ぬるいだけ。でも、金儲けをしたいから、そうなってしまう。かつてブラジルは日本からバレーボールを学んだけれど、今では勉強することはないと言っています。日本はブラジルからサッカーを学ぼうという気があるのでしょうか。

日本は島国で、国内ですべてが成り立っている国だから、国際的な情報に弱い。海外との差を認識できず、日本はスポーツが強い国だと錯覚してしまう。これも、日本のスポーツが強くならない理由のひとつ。そのことに気がつかないし、あるいは、マスコミは気がついているのに、儲けるためにあえて報道しないようにみえます。

サッカーに関して言えば、このままでは日本は暗黒の時代に入ってしまいます。サッカーを生業としている人、特に解説者は声を上げないと、自分の住んでいる世界がどんどん縮小していきます。クビを切られてからでは遅いんですよ。

飯尾 篤史 スポーツライター

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いいお あつし / Atsushi Iio

東京都出身。明治大学卒業後、サッカー専門誌の編集記者を経て2012年からフリーランスに転身、スポーツライターとして活躍中。『Number』『サッカーダイジェスト』『サッカーマガジン』などの各誌に執筆。著書に『残心 Jリーガー中村憲剛の挑戦と挫折の1700日』(講談社)、構成に岡崎慎司『未到 奇跡の一年』(ベスト新書)などがある。

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