駅に「ポケモン」が出現!法的問題はあるか 誘客にもなるが歩きスマホ事故の原因にも

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しかしその前提として、鉄道地を含め他人が管理する場所には色々な形態があることの認識は必要であろう。立入可能な者の範囲の視点でみれば、個人宅のように家族や知人などごく限られた特定少数者の立入しか予定していない高度に私的な場所から、店舗、駅、観光施設、神社仏閣、病院、図書館など、不特定多数者の立入を予定している場所まで、それは様々である。

線路への立入を禁止する駅ホーム端の警告(写真:はる/PIXTA)

後者の場合、立ち入る不特定多数者の多くはその施設を利用する者である。鉄道の場合でいえば、駅に来る者は通常は鉄道を利用する者である。しかし、鉄道利用目的以外での立入が厳しく制限されるかというとそうではない。鉄道事業者としても平穏に駅にいる者について、鉄道利用の目的がなかったとしても追い出そうとはしない。

ただしその一方、駅構内では許可なく営業活動、ビラ配布、勧誘などをすることが禁じられている。駅構内に誰を立ち入らせて誰を立ち入らせないかは鉄道事業者が自由に管理することができるから当然である。

そうすると、位置情報ゲームにおいて鉄道事業者の管理権が及ぶ範囲のところに拠点が設定され獲物が出現するようにした場合、鉄道事業者が位置情報ゲームの運営会社に拠点の設置や獲物の出現を取り消すよう求めることも考えられる。

管理権の侵害にはならないが・・・

バーチャルなものが駅にあっても鉄道事業者の管理権を物理的に侵害しないとはいえ、それが間接的にでも鉄道事業の支障につながるのなら、鉄道事業者は拠点の設置取消や獲物の出現取消を求めることも考えるであろう。鉄道事業者はその管理権が及ぶ範囲をどのように利用しどのように処分するのかを自由に決めることができるから、位置情報ゲームに関わらないようにする自由もあるのである。

もっとも、鉄道地のなかでも様々な形態がある。たとえば、① ホームや線路など列車運行に直接かかわり、安全確保が厳しく求められる場所、② 鉄道利用者の便益に供し、かつ鉄道事業と密接不可分の駅舎内待合室やコンコース、③ 鉄道利用者の便益に供するものの、鉄道利用者以外の利用を予定していてより外部に開かれている駅前広場
など、それぞれが持つ性質や危険性は様々である。

①の場合、高速で行き来する列車が目の前にあり、安全確保がより厳しく求められるホームや線路、踏切などに拠点が設置されたり、獲物が現れたりするような場合には、鉄道事業者が取消を求める必要は特に高くなるであろう。

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