金利急騰!債券市場を破壊した黒田緩和 日銀は管理不能、高まるリスク

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しかし、この3つの組み合わせは大きな問題を引き起こしている。

なぜなら、債券を日銀が大量に買って金利を押さえ込んで行きます、というのなら、金利は下がる(債券価格は上がる)方向だ。それだけなら、白川前総裁時代までがそうであったように、銀行や保険会社は安心して債券を買うという行動になると考えられる。

しかし、わずか2年で2%ものインフレ率を実現しようというのならば、そのときの金利は少なくとも2%以上の水準になると予想される。金利は今からこれを織り込んで上昇(債券価格は下落)するのが自然だ。そうであれば銀行や保険会社は怖くて債券を買えなくなる。

つまり、この2つは正反対のベクトルを市場にもたらす。そのため、債券市場参加者は金利の方向感がつかめなくなったのだ。しかも、金利を金融市場調節の操作目標から金利を外したことで、金利が不安定化する要因となった。ゼロ金利が当面の間は続く、といういわゆる時間軸効果は消滅してしまった。そして、3つ目のルートによって、民間金融機関の売り買いのボリュームが薄くなり、国債市場の流動性は極端に低下した。

こうした方向感を欠き、流動性のない市場で、まとまった売りが出ると金利は上昇し、これがまた売りを呼ぶ。そもそも、全ゾーンの金利を押し下げるとしたのに、全ゾーンの金利が異次元緩和の前よりも上昇しているのだ。日銀が管理不能に陥った証左だ。日本の債券市場は米国の金融政策のみならず、ショックに弱い市場になってしまった。市場参加者は不安を募らせている。

「信用秩序の維持」はないがしろに

3つ目のルートには他にも問題点がある。

いまのところ、日本国内の個々人が預貯金や保険をやめて銀行や保険会社から資金を引き出し、株式市場や外貨建て金融商品に資金をシフトさせるという動きは明確に起きていない。日本株買いも円売りも日本人ではなく、外国人投資家が主体だ。円安もドル高の裏返しという様相が強い。

次ページ信用秩序の維持は日銀の使命のはずだが・・・・
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