日米の「心地よい相場」は終幕を迎えつつある 金融政策に市場が反応を示さなくなってきた

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足元では、市場は「経済成長と金融緩和の共存」を、FRBは「経済は成長しているものの、リスクをはらむほどの速過ぎるペースでの成長とはなっていない」という「ゴールディロック」状況を享受する格好になっている。

しかし、9月のFOMC後の記者会見でイエレンFRB議長は「私と委員会のメンバーは次のステップの適切なタイミングについて、今回の会合で意見交換した」と述べ、議論になっているのは「利上げの有無」ではなく「タイミング」であることを示している。

こうした中でフィッシャーFRB副議長が市場予想を下回る結果となった雇用統計を「ゴールディロック」的結果だと歓迎する意向を示したのは、政治的に利上げし難い局面で景気の過熱が見られなかったからだと思われる。

FRBが政治的に利上げし難い局面を「ゴールディロック」的状況で乗り切ることを望んでいるということは、換言すれば政治的制約が取り除かれれば、直ちに利上げをする方針を持っているということでもある。市場が、FRBの利上げ先送りを一方的に歓迎しなかったのは、「ゴールディロック」状況の終幕がカウントダウンに入ってきていることを意識しているからに他ならない。

日銀は実質的に「マイナス金利の深掘り」をしている

一方、日本でも日銀が9月に打ち出した新しい政策「金融緩和強化のための新しい枠組み」が本格的にスタート、新たな状況を迎えつつある。日銀は国債買い入れオペ(日銀による国債買い入れ)を実施しつつ、10年国債の利回りを「概ね0%で推移」させる方針だ。

しかし、国債買い入れオペを実施することは、10年国債利回りの低下(債券価格上昇)を促すものである。つまり、10年国債利回りがマイナス圏で推移するなかで日銀が国債を購入するということは、「マイナス金利の深掘り」をすることに他ならない(日銀はマイナス金利の深掘りを否定)。7日の国内債券市場でも、実際に利回りはマイナス圏でわずかながら低下した。

10年国債利回りがマイナス圏で推移するなかで「概ね0%」で推移するように金融調節を行うのであれば、日銀が保有している国債を売却することが必要なはずだ。しかし、日銀による保有国債の売却はマネタリーベースを減少させることになる。

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