不寛容すぎる世代対立は、なぜ生まれたのか 井手英策教授に聞く「分断社会」の解消法

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「知らんがな」で成立してしまう会話の恐ろしさを考える
わたくし、TKO木本武宏が、複雑な現代の世の中についてその道のエキスパートに教えを乞う対談。第7タームは、井手英策さんがお相手です。慶應大学で教鞭をとられている私と同世代の気鋭の論客。最新刊『18歳からの格差論』は、みなさんもう読まれましたか。老いも若きも必読ですよ。2回目は、「世代間対立が生まれた理由」について伺いました。

リタイア世代と現役世代の対立はなぜ起こるのか

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木本前回は、分断社会が生まれたわけを伺いましたが、今回は世代対立について伺います。いったい、どの世代が対立しているんでしょうか。

井手:おじいちゃん、おばあちゃん世代と現役世代に深刻な対立が生まれています。お年寄り世代は若い時にバリバリ働いて、貯金もできて老後のおカネも蓄えてきました。ところが今の若い人たちはそれができない。働いても貯金できない、豊かになれない中で、お年寄りがねたましく思えてくる。

ところがそのお年寄りは、子育ても、自分たちの親世代の介護も嫁がやったし、男性は働いて家計を支えてきた自負がある。だから、現役世代が幼稚園、保育園をもっと充実させてと要望しても、彼らには「それは嫁の仕事だろう」「男はしっかり稼げ」という意識がある。子育てにカネを使うなら「われわれの年金を増やせ」と。『「若者奴隷」時代』なる本が話題になったように、若い人はめちゃくちゃ損をして、お年寄りは得をしている議論と、今の若者がだらしなくて、自分で責任を果たそうとしないという、お年寄りの議論がぶつかり合うんです。

木本:お互いに認めていない感じがします。

井手:「保育園落ちた日本死ね!!!」のブログをきっかけに、保育士さんの給料を月額5万円上げると議論になりましたが、多くの日本人は「なんで保育士の給料だけが5万円上がるんだ」と、許せない気持ちになったのではないでしょうか。保育所をなんとかして欲しいという気持ちはわかる。でも、お年寄りにも、子供のいないカップルにも、保育士の給料はなんの関係もない。

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