東京五輪問題で見えたアベノミクス成功の鍵 財政政策の「中身」が今後ますます重要に

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田中秀臣・上武大学教授のコラムでは、国会論戦に挑む民進党の経済政策が批判的に論じられているが、筆者はこの見解に同意している。既に、メディアでも観測記事が流れるようになったが、今後の外交政策の成果次第だが、安倍政権は早期の衆議院解散を試みる可能性が高まっており、2017年にかけて安倍政権の政治基盤はより強固になるのではないか。

小池都知事の政策が、相場のかく乱要因になる可能性も

民進党など野党に対する国民の関心が全く高まらない一方、むしろ注目を集めているのは小池百合子東京都知事の政策である。豊洲市場移転問題に続き、そして東京オリンピックの施設計画を見直す方針が示され、メディアでも大きく取り上げられている。この問題を通じた世論の変化、それが国政に及ぼす側面に対する安倍政権の対応が、政治的に重要になり、今後相場のかく乱要因になる可能性があるだろう。

9月末に公表された東京都の調査での7000億円の予定だった総経費が3兆円を超えるとの試算をもとに、特に費用が拡大するボート・カヌー、バレーボール、水泳の3会場の見直しを検討すべき、とされている。今後1カか月以内に見直しの結論を固めるとする小池知事に対して、オリンピック大会組織委員会、IOCや競技団体が難色を示している。

2週間限定(パラリンピックを含めればより長期だが)のお祭りのために3兆円(国民一人当たり約3万円)も税金を使うのか、などの意見がメディアで多くなっている。

東京オリンピックが決まった時は、これが景気回復などを後押しするなどの賛意が多かったが、これまでの経緯を経て世論の風向きも変わっている。筆者自身はいずれの見解にも同意しないが、多少の経費増加はやむを得ないとしても、予定されていた経費が約4倍に膨れ上がるのはさすがに普通とは思えない。

実務的な事情があるにせよ、オリンピック大会組織、競技団体、施設を受注する企業らの意向で経費が積み上がった側面は否定できないだろう。国民的な祭典とはいえコストとベネフィットのバランスは重要で、コストの負担者はあくまでも納税者である一方、オリンピック大会組織などはコスト負担を意識するインセンティブが働きにくい。

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