日本人が知らない「ベンチャー投資」の奥義 米国の一流VCの投資スタイルは何が違うのか

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左からKPCBのEric Feng氏、BessemerのEthan Kurzweil氏、話を引き出すグロービスキャピタルパートナーズの高宮慎一氏

2000年、マイクロソフトがWordを開発した際は、300人のエンジニアで2年間かかったのに、2007年のフールーの動画サービスは30人で3カ月、2010年のインスタグラムのSNSサービスは3人で6週間と、開発のスピードはどんどん加速しているとのこと。この分野での起業は容易になりましたが、競争は激化。また、グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなどの既存大手企業が機動的に動いており、伸びそうなビジネスは、すぐに抑え込まれるそうです。

しかし、スタートアップにチャンスがないわけではなく、ミレニアル世代(15~35歳の年齢層)に対してのサービスであれば、顧客ニーズなどが既存のパラダイムと違うので、挑戦する価値があると現状分析をしています。

そのような中、KPCBは、ミッションを持った創業者の支援、息の長いマラソン型の投資を実施。グーグルやアマゾンとは20年以上前の投資時点からの関係が続いており、今もボードメンバーとなっているとのこと。同社は、それぞれに強いネットワークを持つパートナーが、チームとして連携することで企業成長のプラットフォームを提供しています。

成功するかどうかは個人的な人間関係で決まる

投資先もそうそうたる企業群になっており、政治力も含めて大きな影響力を持ちます。その結果、自然と良い投資案件が集まってくる好循環になっているのです。しかし、Feng氏は、そのような強い組織の中にあっても、投資が成功するかどうかの最終的な決定要因は、キャピタリストと起業家との人のつながりであり、個人的な関係を大事にしていると言います。

Bessemer Venture Partnersは、1911年から投資活動をしている名門で、近年はリンクトイン、ボックス、ピンタレストなどを育成。過去4000億円の投資資金を扱い、直近のファンドは1600億円規模、15人のパートナーと47人のスタッフで投資活動を実行します。Ethan Kurzweil氏はその中で、若手のエースとも言える存在。彼は、Bessemerの投資は「ロードマップ」に基づくと言います。ロードマップとは、投資の成功に向けた基本ルールを示すもの。これを策定し、明示することで、各キャピタリストにとって、特定分野の知見やデータ解釈を整理することができ、効果的かつスピーディに投資判断ができるそうです。

ロードマップには、投資すべき各業界の定義、競合の所在、最近の動向、成功のための行動規範などが記され、ホームページ上に公開されています。各分野の企業の時価総額等のインデックスや個別企業レポートも充実しています。クラウドコンピューティング、サイバーセキュリティ、フィナンシャルサービス、ヘルスケア等のロードマップがあり、リサーチ会社に勝る論理的な枠組みのもと投資を実行しています。また、人的な支援も重視し、投資先企業のコミュニティ形成や事業パートナーとのつながり作りに注力しています。

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