「アジア現地採用」の待遇はどんなものか? 「グローカルジョブ」に求められるスキル

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キャリアデザインの選択肢は広がる

また、語学力に関してはさほど高い英語力は求められない場合が多く(目安としてTOEIC600~700点程度)、きちんとしたビジネス日本語が高く評価されます。

つまり「海外で働く」というとグローバル!と思いがちですが、日系企業のアジア海外就職は、現地ローカルの仕事を日本ローカルのやり方で回す仕事になるのです。

私たちはこれを「グローカルジョブ」と呼んでいます。

その後のキャリアとして、この「日本のビジネス文化」と「現地のビジネス文化」のバイリンガルとして日系企業グローカルジョブを渡り歩くという選択肢もありますし、どんどん現地寄りになり、現地企業の日本向け営業担当などを目指すという選択肢もあります。

また、日本や現地(たとえばインドネシア)の人脈や知見と業務知識を武器に、シンガポールや香港でアジアリージョンを統括するような仕事を目指すことも可能でしょう。

ほかにも、今はまだ「グローカルジョブ」に採用されるレベルに達していない人が、まずは、日本語ができればだれでもOKという、コールセンターなどの「日本語ジョブ」に就き、業務の傍ら現地語を学んでグローカルジョブを目指すという選択肢もあります。

アジア海外就職でひとつ確かなことは、「直近では金銭的に困らないレベルの報酬を得ることができる」ということです。

しかし、それが永続的に続くとは限りません。現地の経済の失墜や、就職した企業の現地からの撤退、日本本社の倒産など、さまざまなリスクは存在します。

ただ、「アジアで働く日本人」という、比較的希少な存在として、就職した企業以外でも役に立つスキルを身に付け、自身でキャリアデザインしていくことにより、さまざまな可能性を切り開くことができる、非常に面白い選択肢なのではないでしょうか。

「アジア現地採用で就職したから定年まで安泰」といったたぐいの就職先ではありませんが、自らの選択肢を増やすためのファーストステップとして、非常に魅力的な就職先だと思います。

そのような人生に魅力を感じる人は、ぜひ挑戦しみてはいかがでしょうか?

普通のサラリーマンのためのグローバル転職ガイド』では、アジア現地採用をはじめとする、世界で日本人が就くことにできるさまざまな職種について分析、解説をしています。それぞれの職種に求められるスキルや、選択可能なキャリアパスの例などを提示していますので、「グローバル転職」に興味のある方は、参考にしていただけると幸いです。

大石 哲之 作家・コンサルタント

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1975年生まれ。慶應義塾大学卒業後、外資系コンサルティングファーム、インターネットスタートアップ・エグゼクティブサーチファームの創業などを経て、現在は海外に拠点を移し、投資家としてプライベートな活動を行っている。著書に『3分でわかるロジカル・シンキングの基本』(日本実業出版社)、『過去問で鍛える地頭力』(東洋経済新報社)など20冊以上。

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森山 たつを 海外就職研究家

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森山たつを (@mota2008) 海外就職研究家 1976年生まれ。早稲田大学卒業後、日本オラクルに入社。製造業向けERPの技術営業に携わる。7年の勤務後、日産自動車に転職。グローバル物流管理システム構築プロジェクトで2年間、世界7カ国のスタッフと協業する。その後、1年間にわたる世界一周旅行(32カ国)、2年間の日系IT企業勤務、1カ月のフィリピン英語留学を経て、2011年12月よりアジア7カ国での就職活動を行う。現在は、海外就職に関する執筆、講演活動および海外視察・就活ツアーの企画・運営に携わる。著書に『アジア転職読本』(翔泳社)などがある。
http://morizo.asia
 

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