築地は「食のプロ」が生み出した伝統文化だ 日々の真剣勝負が巨大な市場を支えている

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マグロは獲れる場所や時期により種類が異なり、味もまたそれぞれ。

「築地市場のすごさは、たくさんのマグロが入ってくることですね。その数はほかに類をみません。そのなかからお客さんの要望に合わせて、どういったマグロが良いかを考え、仕入れるのが私たちの仕事です」。

次に訪れたのは、文久8年(1868年)から続く老舗、加藤水産。もともとはエビを専門としていたが、現在は活魚全般を取り扱っている。

代表を務める安田賢二さんは、「仲卸の醍醐味は、安くて“良いもの” をせり落とし、お客さんに喜んでもらえること」だという。

“良いもの”とは、どうやって見極めているのだろうか。安田さんに尋ねると、一瞬で真剣な目つきに代わり「それは言葉では伝えられない」と返ってきた。

「言葉で説明できるのは、あくまで簡単なことだけ。目利きはもっと複雑で、感覚として身に付けるもの。毎日魚に触れていないとわからないことがあるんです。プロの目で魚を見るというのは、そういうことなのだと思います」。

築地市場が今日のように注目される市場となったのは、築地で働く仲卸たちによる、確かな目利きがあってこそ。何度も何度も魚に触れ、失敗と成功をくり返して得た技は奥深く、築地市場を唯一無二の市場として支えている。

うまい魚をこの手で届けたい

築地市場の「せり」や「相対売り」には、仲卸のほかにも参加する人たちがいる。通称「買参(ばいさん)」と呼ばれる、東京都の承認を受けた「売買参加者」だ。この売買参加者には、大手の流通や飲食店、加工業者などが名を連ねる。

都内で飲食店を展開する、にっぱん水産も売買参加承認を受けた企業だ。

「築地市場には独特の文化があって、最初は右も左もわからなくてよく怒られましたよ」と話すのは、副部長の佐藤保憲さん。

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