スイス鉄道メーカー、世界3強に迫る大躍進 世界最大の鉄道見本市で実力を見せつけた

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スイスの私鉄モントルー・オバーラント・ベルノワ鉄道に採用された、初期のGTW2/6型近郊電車。大好評を博し、同社躍進の立役者となる

シュタドラーは、エルンスト・シュタドラーによって1942年にチューリヒで創業、74年の歴史を持つ。当初はバッテリーやディーゼルを動力源とする小型機関車の開発を行なっていた

1962年にスイス北西部のブスナンクへ移転、組み立て工場が建設される。ただし、この当時はまだ、本格的な鉄道車両メーカーとして確立しておらず、旅客用車両の製造も行なっていなかったが、1984年より旅客用車両の製造が始まり、スイス国内の中小私鉄向けにワンオフ車両を(量産ではなく、各私鉄向けにカスタマイズして少量生産)製造していた。

転機となったのは1989年、起業家で政治家でもあるペーター・シュピュラー氏は銀行から500万スイスフランを借り、18人の従業員と共にシュタドラーを買収、ここから同社のサクセスストーリーが始まる。その後同社が開発した、初のモジュール式量産鉄道車両のGTW2/6が1995年にデビューすると、これが爆発的な人気を博した。GTW2/6は、用意されたいくつかのモジュールを適宜組み合わせることで、車両の長さや動力方式(電気・ディーゼル双方に対応している)に至るまで、各鉄道会社の要望に応じた車両が低廉な価格で製造できるという画期的なものだった。

ついに最高速度250km/hの車両まで

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シュタドラー初の2階建て車両Kissを導入した、ドイツの民間運行会社ODEG。ベルリン近郊で活躍する

勢いに乗ったシュタドラー社は、1997年には同じスイスのシンドラー・ワゴン社を買収、翌1998年にはシュルツァー社より、スイスの登山鉄道では欠かせない歯車軌条(ラック&ピニオン)システムの技術部門を買収したが、元を辿ればこれはスイスの老舗メーカーSLM社からの技術だ。

2000年には、本格的な国際展開を行なうため、アドトランツ社と合弁事業を展開、ベルリンのパンコウを本拠地に持つシュタドラー・パンコウを設立した。2001年には、工場の一部と本社機能をベルリンへ移している。その後はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いで、2005年にハンガリー、2006年にポーランド、2008年には初の欧州以外の拠点となるアルジェリアに進出している。

2010年には、同社初の2階建て車両Kissが誕生すると、すぐに各国で採用されるなど人気を博す。2013年にはオランダのフォイト・レイルサービス社を、2015年にはスペインを拠点としたフォスロ社機関車製造部門を立て続けに買収した。こうした事業拡大は、かつてのビッグ3を彷彿とさせる。

創業当時、バッテリーやディーゼルを動力源とする小型機関車だけだったラインナップは、買収と共にその数を増やしていき、創業74年目となる今年2016年には、ついに最高速度250キロの中速列車(準高速列車)、スイス連邦鉄道向けEC250型をInnoTransへ出展するに至った。

これで同社は、長距離列車から都市近郊の通勤電車やトラム、貨物用の機関車に至るまで、ほぼすべてのカテゴリーをそろえたことになる。また地元スイスにおいては特に重要な、急勾配区間用の歯車式軌条の技術も取得しており、ほとんどの登山鉄道で同社の車両が採用されている。

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