公開!「観光列車」の製造費はこう決めている 近鉄が明かしたマーケティング戦略の秘訣

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窓が小さい場所はボックス席に(記者撮影)

観光列車を造れば全国から鉄道ファンが乗りにやってきて投資額は簡単に回収できる、というほど甘いものではない。近鉄は保守的な前提で収支予測を綿密に行なった上で新たな観光列車を開発した。しかし、全国を見渡せば事前のマーケティング調査を十分に行なうことなく採算度外視で造ったのではないかという観光列車も散見される。

観光列車はメディアへの露出が大きく、地域のPR効果にも役立つため費用対効果を見極めることが難しいが、安易に「造ればいい」というものではない。鉄道事業者の自己資金ならまだしも、自治体の補助金を使って作る場合はなおさらだ。なぜ造るのか、どう活用するのかということを鉄道会社と沿線地域が一緒に考えることが必要である。

番外編、久野知美アナインタビュー

9月7日に実施された青の交響曲の試乗会には、人気連載「鉄道会社に直撃インタビュー」(http://toyokeizai.net/category/Tetsujointerview)でもおなじみの女子鉄・久野知美アナウンサーも参加した。今回は番外編として、久野アナウンサーによる、青の交響曲の開発を担当した近鉄・奥山氏への直撃インタビューの内容を紹介する。

――元が通勤電車だとは信じられないほどすてきな車両ですね。

近鉄・奧山氏(右)と久野アナウンサー©ホリプロ

2+1列のデラックスな仕様です。窓幅は1メートル80センチあります。通勤列車で側扉だった場所は窓幅が1メートル30センチしかありませんが、すべての座席から車窓をお楽しみいただきたいので、この部分だけは向かい合わせのボックス席にしました。乗務員室後部は寸法の制約上、1人席ですが、テーブル付きにして特別感を出しました。このように通勤電車特有の配置をうまく活かすことができました。

――カーテンの刺しゅうがすてきですが、カーテンの裏側も美しいです。

よくお気づきですね。この列車を外から見た人に「きれいだな、乗りたいな」と思ってもらえるような配色にしました。テーブルに照明を付けたのも同じ理由です。

――さすが、女性心をよくわかっていらっしゃいますね。ところで、外観を青色にしたのはなぜですか。

沿線の自然に調和した色ということで青を選びました。質感を高めるためにメタリック塗装をしています。青の交響曲は従来の当社車両にないほど丹念にデザインした車両です。ぜひご乗車をお待ちしています。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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