有機ELでサムスン独走、日本勢の運命は? 2017年のiPhone採用後の市場をどう読む?

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有機ELは薄さ、色再現性や動画表示性能のよさなどで強みを持つが、こうした点では液晶ディスプレーも引けを取らない。決定的な違いは形状の可変性であり、将来的に有機ELは折り畳みや折り曲げ、さらには巻くことも技術的には可能である。

とはいえ、折り曲げ可能な有機ELパネルはまだ量産可能な状況ではない。サムスン電子は2017年に折り畳みパネルを搭載した機種の投入を計画しているが、アップルが導入するのは2019年以降となろう。それまでは、いわゆる曲面パネルとなる可能性が高い。

さらに有機ELはコスト、消費電力、精細度などにおいても課題を抱えている。また、単に折り畳む程度であれば、液晶ディスプレーでも超薄型化の技術などを応用すれば対応可能だ。

有機ELが「過渡期」の技術になる可能性

曲面パネルに関しては、アップルとSDCの契約期間は、投資規模などを勘案すると3年程度と考えられる。が、実はアップルも自社でマイクロLEDなど、有機EL代替技術の開発を行っている。SDCが2018年ごろまでに折り曲げ可能なパネルの大量供給体制を確立するメドを立てないと、アップルが契約満了後にほかの技術を採用する可能性も否定できない。

資金潤沢なSDCは、関連投資を自己資金で賄い、アップルの資金を活用しない。それが、アップルの将来の選択肢を増やすことにもなる。

また、有機ELが本格的に普及するには、サムスンとアップル以外の端末メーカーが追随することが大前提となる。それには、SDC以外のパネルメーカーが十分な供給体制を整えることが必要だ。

しかし、技術力と実績でSDCに次ぐLGDは、投資はしているものの慎重な姿勢を崩していない。JDIやシャープは資金面で課題を抱えている。積極投資を行う可能性が高い中国メーカーに関しては、量産出荷の実績がなく、技術力でSDCに大きく水をあけられている。

こうした状況でSDCが先行者利益の独占に走れば、アップルなどの端末メーカーがほかの技術にシフトすることにもなりかねない。ここに、出遅れた日本のパネルメーカーの反攻の芽が潜んでいるかもしれない。

中根 康夫 みずほ証券シニアアナリスト
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