「いきものがかり」とコラボした小田急の思惑 特急停車で勢いづく海老名、静観の厚木

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相鉄線の利便性が向上する「神奈川東部方面線」の開業に備えて、小田急も動き出した。今年3月26日からは特急ロマンスカーが海老名駅停車を開始した。海老名市シティプロモーション課は、「今まで特急が停まるべき駅に停まっていなかっただけのことで、停車は時間の問題だった。今後さらに停車本数が増えてほしい」と期待する。また同市都市計画課も「特急停車駅となって、海老名の名前が登場する機会が飛躍的に増えた。今後もさらなる宣伝効果が見込める」と語る。

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本厚木駅と厚木駅(海老名市)の間にかかる相模川橋りょうを渡る特急ロマンスカー(写真 :ニングル / PIXTA)

一方、平日の特急停車本数が削減された本厚木駅。平日の帰宅時間帯の特急の停車本数も減らされたことで、特急を通勤利用している同駅周辺の勤め人などからは、特急停車本数の回復を求める声も聞こえる。

特急停車本数は、都市間競争の行方を左右する重要な要素のひとつであるが、現在のところ厚木市は静観したままである。同市には、特急停車本数を回復させるための都市戦略が求められる。

鉄道と沿線、イベント機に共働を

最後に、「ロマンスカーで行くでしょー号」「いきもの電車」の運行を決断した小田急に話を聞いた。小田急電鉄CSR・広報部は「『超いきものまつり2016』にあわせて、当社でも特別列車『ロマンスカーで行くでしょー号』や通勤電車で『いきもの電車』を運行するなど鉄道会社ならではの『応援企画』を実施することが、両エリアへのさらなる注目の喚起・認知度の向上に繋がると考え実施した」と運行のきっかけを明かし、さらに「『ロマンスカーで行くでしょー号』については会場最寄り駅までをノンストップで運行することで、同ライブに来場されるお客さまの利便性向上を図るとともに、これまで『小田急ロマンスカー』にご乗車いただいたことのないお客さまにもご利用いただきたいと考え運行した」と続けた。同社は「今後も小田急沿線エリアの活性化のため、機会をとらえ、さまざまな企画を実施し、鉄道利用につなげたい考え」という。

4日間で10万人を動員した今回のイベント。盛り上がりを一過性のものに終わらせるのではなく、今回のイベントを機に、小田急と海老名・厚木両市は、鉄道と地域双方の持続的発展を実現するための構想を描き、実行に移すことが期待される。小田急は今後も沿線地域の発展に協力するとともに、海老名・厚木両市と住民も特急停車本数増加を目指したまちづくりを進めて、来訪者・定住人口の増加や商業施設・企業の誘致といった街の活性化と鉄道の乗車人員増をともに実現する。こうしたウィン・ウィンの関係を構築したい。

「超いきものまつり2016 地元でSHOW!!」の開催も、「ロマンスカーで行くでしょー号」「いきもの電車」の運行も、「いきものがかり」の強い希望により実現したと言う。「いきものがかり」の地元愛に応えるためにも、小田急と海老名・厚木両市の3者による鉄道と地域双方の発展へ向けた共働が期待されるところである。

大塚 良治 江戸川大学准教授

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おおつか りょうじ / Ryouji Ohtsuka

1974年生まれ。博士(経営学)。総合旅行業務取扱管理者試験、運行管理者試験(旅客)(貨物)、インバウンド実務主任者認定試験合格。広島国際大学講師等を経て現職。明治大学兼任講師、および東京成徳大学非常勤講師を兼務。特定非営利活動法人四日市の交通と街づくりを考える会創設メンバーとして、近鉄(現・四日市あすなろう鉄道)内部・ 八王子線の存続案の策定と行政への意見書提出を経験し、現在は専務理事。著書に『「通勤ライナー」 はなぜ乗客にも鉄道会社にも得なのか』(東京堂出版)。

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