スウェーデンで自死した難民少年の深刻な背景 アフガニスタン難民のアンサリさん自殺の理由

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 9月22日、難民少年の悲劇は、移民・難民に対し最もオープンな政策を取るスウェーデンのような国においてさえ、受け入れの限界にあることを露呈している。写真は、難民に付き添う警察官。スウェーデン南部マルメ郊外の駅で昨年11月撮影(2016年 ロイター/Johan Nilsson/TT NEWS AGENCY/File Photo)

[スバングスタ(スウェーデン) 22日 ロイター] - 4月のある朝、スウェーデン南部ブレーキンゲ地方の静かな村で、アフガニスタン人の少年、ムスタファ・アンサリさんの旅は終わりを迎えた。

若い亡命希望者のためのセンターに身を寄せていた10代のアンサリさんが自室で亡くなっているのを、センターの職員が午前7時ごろ発見した。その後の調査によると、2段ベッドのシーツがあまりにきつく首に縛りつけられていたため、職員はナイフで切らなければならなかったという。

サッカー好きだった少年の部屋には、覚えたてのスウェーデン語を書き込んだ、色とりどりの付せん紙が至るところに貼られていた。

死因は自殺

死因は自殺と断定された。検視報告書には17歳と書かれていたが、アンサリさんの身元についての書類はない。スウェーデンに9カ月滞在していたが、移民当局はアンサリさんの亡命申請のための面接を一度も実施しないままだったからだ。

欧州での移民・難民危機において、アンサリさんは新たな種類の犠牲者である。多くの難民が欧州にたどり着く前に命を落とすなか、アンサリさんは無事に目的の地へとやって来ることができた。だが実際には、対処しきれないほど大量の申請手続きにパンク状態となっているスウェーデンの現状に巻き込まれることになった。

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