相続争いを想定していない人に教えたい泥沼 少ない財産だからこそ遺言書が必要だ

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民法上、遺産相続は遺言が優先されますが、一定の方式にのっとって準備する必要があります。走り書きやメモ、録音テープは遺言としての効力は認められません。ときどき、日記につづられた遺言的な文章を提示する人がいますが、悲しいかなそれはただのポエムです。

遺言には3つの種類があります。

① 自筆証書遺言

② 秘密証書遺言

③ 公正証書遺言

この中でいちばん低価格で作成できるのが、自筆で遺言をしたためる自筆証書遺言ですが、書式を間違えたりすると無効になるうえ、家庭裁判所で検認してもらわなくてはいけません。また、その有効性をめぐって、相続人の間で争いになることも珍しくないのです。

相続手続をスムーズに進め、争いを防止したいなら、公証役場でつくってもらう、公正証書遺言をおすすめします。作成するには、公証役場という場所に本人が行き、証人2人の立会が必要です。作成した遺言書は公証役場で保管するので、紛失したり書き換えられたりする心配もありません。価格も、相続財産の額や遺言内容に応じて算出されるので良心的です。

ときどき勘違いしている人がいますが、遺言書は財産や子どもの認知などに関すること以外には法的効力がありません。たとえば「自分のお葬式はこうしてほしい」と書かれていても法的な拘束力はないのです。ただ、遺言書にあればなるべく親の遺志をかなえてあげたいですし、「おふくろは、こういうふうに考えていたんだ」とあらためて気づくことができます。

遺言が必要なケース

次のような相続を考えている場合には、必ず遺言が必要です。

・夫婦の間に子どもがいない場合

→妻(夫)にすべてを残したいとき。遺言書がないと夫(妻)のきょうだいに4分の1いくことになる

・息子の妻に財産を贈りたい場合

→先に息子が亡くなっていると、その妻には相続権がない。遺言書で「遺贈」する

・特定の相続人に事業を承継させたい場合

→遺産分割で株式が分散すると、経営が成り立たなくなるおそれがあるため、遺言書が必要

・内縁の妻の場合

→内縁の妻には相続権がないので、遺言書が必要

・相続人がいない場合

→相続人がいないと遺産は原則、国庫に帰属。親しい人やお世話になった人に贈りたい、寄付したいなどの場合は遺言書が必要

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