「同業者と結婚」は退職や異動の理由になるか 上司に「どちらかが辞めろ」と言われたら?

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ですから、「婚約者が同業他社の従業員」であることだけを理由に、退職を余儀なくされたとしたら、合理的な理由のない解雇を禁ずる「労働契約法」16条に違反し、無効となります。

配置転換はどうか?

次に、配置転換(異動や転勤)を命じられたらどうか、検討してみます。配置転換は本来、業務上の必要性がないものは、法律上認められません。

確かに、営業上の秘密を守るという目的は、営利を追求する会社側にとっては重要なことです。しかし、配置転換という手段がその目的に見合ったものかどうか、慎重に検討する必要があります。

従業員が営業上の秘密を漏えいするおそれがあるとしても、先ずは情報漏えいを防ぐ体制が社内で整っているかをチェックすることが先決です。また、本当にその従業員が情報漏えいを行う危険があるのか、慎重な判断が求められます。

このように、ご夫婦になる方のどちらかが会社をやめなくてはならないということはありません。また、社内での異動についても、必ずしも有効な配転命令とは言えない場合もありますから、無条件に受け入れなければならない、とまでは言い切れないのです。

柴田 幸正(しばた ゆきまさ)弁護士
2008年登録、愛知県弁護士会所属。同弁護士会の消費者委員会では、食の安全問題検討チーム長を務めている。地元の瀬戸市で、個人向けの一般民事・家事事件、中小企業向けの顧問業務などを取り扱っている。メディア出演歴「クイズプレゼンバラエティーQさま!!」など。
事務所名:柴田幸正法律事務所

 

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