医者から外資金融・コンサルへの転職が急増 敷かれていた医療キャリアからの転出

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保守的な医学部生たち-過去のレールがガッチリ固定

「あんたたち、もっとリスクをとりなさいよ」。

医学部の友人を思い起こして、雅子は回想する。大して飲めないビールをちびちびのどに流し込みながら、医学部の閉塞感、安定志向の高さについて彼女は問題意識を投げかける。

大半が医者の子供で、給料自体は決して高くはないが、その代わり絶対に解雇はない。雅子が出会った医学部の学生は、性格的にも“過去のレールが将来のレールにしっかり固定された、腰の重い人”ばかりであった。 

職業選択が不自由な、世襲制ドクター予備軍

思えば、私たちの社会の、“医者を志す動機”は薄弱なところが大きい。多くの欧米諸国では、医学部に入る前に、一年間本当に自分が何をしたいのかサバティカル(休暇)をとり世界旅行や奉仕活動で自分に向き合う。

これに対し私たちの周囲では生まれたとたんわが子に歯医者をつがせ、物心ついたときから数学の塾に通い詰めさせる。本当はバンドでドラムをやりたい“メタリカ息子”を皮膚科の研修医にしたてあげ、もしくは公務員のお父さんが旧世代の憧憬心から、“いつかはうちも医者に……”と、長男の学費に全てを注ぎ込む。

結果として、医者への志望動機を述べる学生側の理由も、甚だ弱々しいものである。「おばあさんが病気になって、治してあげたいと思って医者を志望しました」などと表向きは言いつつも、実際は親から病院を継ぐよう幼少期から塾に入れられっぱなしだった、という貧弱な真相を吐露する人が、私の(けしからん)医者の友人には非常に多い。ざっと計算して、医者になるまであと20年。御祖母様の御長命をお祈りする次第である。

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